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清々しい朝。開かれた窓の外に見える鎮守府近海は穏やかで、カモメの声さえ届く。 淹れたてのコーヒーを嗜みながら、僕が青葉が刷ったばかりの朝刊を読んでいると―― 「提督! おはよう!」 ノックも無しに元気良く扉を開いて、我が艦隊の秘書艦娘、最上が現れた。 「おっこれは……う~ん、いい匂い! 提督、何それコーヒー?」 部屋に入って敬礼も早々、最上は鼻をくんくん利かせて、僕のカップを指差す。 「あぁ、そうだ。最上も飲むか」 「えー、いや、まあ……僕はいいや。匂いだけで」 「苦くて嫌いなんだよな?」 「そんなコト無いよぉ。お風呂上りにいつも飲んでるし」 最上は腰に手を当てて、右手をくいっと口元で傾けて見せた。 「コーヒー牛乳だろそれは」 「絶対にコーヒー牛乳のが美味しいもんねー。間宮さんのは絶品なんだよ?」 「いつまでもお子様だと、駆逐艦娘どもにバカにされるぞ」 「なっ、余計なお世話だよ!」 最上は口を尖らせて、べぇっと小さく舌を出した。 正直このお友達感覚……もう少しどうにかならないものかと思ってはいる。 僕は黙ってコーヒーをもう一口。 「……で、それで? 提督、今日はどうするの?」 その一瞬で、最上はもう気持ちを切り替えていた。 これから始まる一日に思いを馳せ、にっと歯を見せて笑う。 この切り替えの早さや、さばけた雰囲気が、僕が彼女を秘書艦娘に指名している理由だ。 「えっと、第4艦隊はまず補給だね。そうしたら、深海棲艦の動きが活発な方面で偵察かな」 作戦の立案補助能力や、部隊への配慮も上々だし、 「この前ドックで衝突しかけちゃってさあ……あそこの角、ミラーがいるよ。まったく」 そそっかしい彼女が時折挟む他愛のない会話も、僕にとっては重要な情報源だった。 ――でも。僕は一つだけ気にしていることがある。 「う~ん、そうだな……」 僕は資料やらを情報やらを最上から手渡されると、いつもあれやこれやと考えを巡らせる。、 当然その間、最上は手持ち無沙汰だ。はじめこそ、まっすぐに立って僕の様子を伺っているが、 しばらくすると癖毛をいじったり、つま先をとんとん鳴らしたり、暇そうにし始める。 「ソファ、座ってていいぞ」 「ん? いや、別にいいや」 「じゃ楽にしてろ。まだかかる」 「イエッサ~」 最上も邪魔する素振りは見せない。自分がこの鎮守府で戦闘に参加する以上、この僕の決定が いかに重要なことか、彼女なりに理解しているのだろう。 そうして最上はいつも決まって窓の方へと向かうと、窓枠に手を突いて外を眺め始める。 開け放たれた窓から吹き込む涼しい朝の風が、栗色の髪をさあっと揺らす。 言動も服装も髪型も、どこか少年らしい最上だったが、こうやって窓の外を眺めている横顔に、 僕は最上の中に確実に存在する『少女』を意識せずにはいられない。 きっと結ばれた口元や長いまつ毛、キュロットからすっと伸びる健康そうな脚。 窓の外のに広がる果てない海を見つめるくりっとした瞳も、艦娘らしい不思議な憂いを湛えている。 ――でもね? ぐい、ぐいぐいっ。 しばらくすると最上は、決まって爪先立ちになって、窓の縁に押し付け始めるんです。 えぇ、その、キュロットの。はい。正面の。 ……股の辺りを。 最上は、別にそれをしているからと言ってヘンな声を出したりするわけじゃない。 表情一つ変わらない。ただ一心に窓の外へと気持ちを傾けているはずだ。なのに―― ぎゅっ。ぎゅ。 最上は質素な窓の木枠に対し、股の辺りで全体重を預けている。 キュロットに隠された小さなお尻が時折、何かを探るように左右に揺れる。 ――絶対無意識なんだよな、アレ。 僕は別にそれに対して邪心を抱いたりしない。まだ子供の、少女になりかけの艦娘がひとり、 何だか良く分からないうちに何だかイイキモチー? になっているだけなわけで。 僕は結局今日も注意することも出来ないまま作戦をまとめると、ふうっとため息をついた。 それが僕の合図だ。 最上は待ってましたとばかりにこちらをくるっと振り向き、とととっと笑顔で僕の方に 近づいてきて、執務机の角に勢い良く両手を突き―― あろうことかですよ、はい。そうなんです。 ぎゅーっ。 そのままの勢いで、執務机の角っこに、ぎゅぎゅぎゅ~っと押し付けるんです。 ええ、キュロットの。はい。正面の。 ……オンナノコの、大事な辺りを。 「提督ッ、決まった?」 そしてそのまま、押し付けた股間を支点にして、やじろべえみたいにバランスを取って 僕に身を乗り出してくるんです。 「あ、あぁ……。だいたい最上が考えてくれた通りだ、まずは――」 聞く体勢はどうあれ、最上は真面目に僕の話に耳を傾ける。指示を二度聞き返すこともない。 最上はしっかり、秘書艦娘としての責務を果たしているのだ。 股間をぐりぐりと机の角っこに押し付けて、小さくお尻を揺らしながら。 「それじゃ提督、僕は先に作戦室で準備してるから。5分後に集合だよ?」 一通りの説明を聞くと、最上は資料を脇に挟んで足早にドアへと向かう。 そしてくるっとコマのようにこちらを振り向き、小さくウィンクして敬礼した。 「今日も僕、頑張るからね! 提督も頑張ろっ?」 ドアが閉じられて、残されたのは僕一人。 最上は部屋に長居するわけでもなく、僕に特別懐いているでもなく……。 ちょうど良い距離感を保って、僕と最上は互いの任務を果たしていると思う。 僕は冷めたコーヒーを飲み干して立ち上がり、さっきまで最上が身を預けていた執務机の角を撫でた。 まだ、ぬくもりが残っているような気がして、小さな罪悪感と虚しさ感じたが、それもそこまでだ。 ――そのうち、やらなくなるだろな。 僕はちょっとだけ笑うと帽子を被り直し、最上たちの待つ作戦室へと向かった。 =============== ~鎮守府 ヒトフタゴーマル~ 昼食を終え、青空の中天から、陽がまっすぐに降り注ぐ時間。 誰かが聞いているのだろう。古く歪んだクラシックのレコードが、穏やかな潮風に乗って聞こえてくる。 戦時、それも軍施設の中とは思えない、ゆったりまったりした鎮守府の昼下がり。 その柔らかな空気は、提督の執務室も例外ではない。 夏が過ぎ、真昼でも過ごしやすいこの季節だ。扇風機もエアコンも、とうにお役御免。 執務机の灰皿から立ち上る紫煙も、天女の羽衣のようにすぅっ……と天井へと消えていく。 誰にも邪魔されることの無い、何にも変えがたい至福の時間だが―― バーン! 何の遠慮も無しに、木製のドアが豪快な音を立てて開け放たれた。 「提督ー! 起床おぉーッ!」 暢気な空気をブチ破る、秘書艦娘・最上の大声が部屋中に響き渡る。しかし、 「んっがー んっごー」 提督は帽子で顔を隠し、机に脚を投げ出して高いびきだ。 「起床ー! 起床きしょうキッショー! ぱっぱらっぱらっぱらっぱぱっぱらー♪」 だが最上も負けていない。両手でメガホンを作り、起床ラッパの口真似をしながら提督の すぐ耳元で騒ぎ散らす。 「はがぁ~……許せ、あとゴフン……」 ようやく気づいたのだろうが、帽子の下から聞こえる声は夢うつつだ。 「何ノンキな事言ってるんだい提督! あと10分でヒトサンマルマルだぞ!?」 「ほわあぁぁ~……むにむに……」 「今日はこの後、お偉いさん達が会議に来るって言ってたじゃないか!」 「ん~? あと10分……あるんらろ……? いいじゃん……ぐぅ……」 「駄ぁ目っ!」 最上は提督の顔を覆っていた帽子をかっぱらうと、自分の頭の上にひょいと載せた。 白昼の眩しさに晒され、提督の眉間がぎゅーっと寄せられる。しかしそれでも起きない。 「ったくー、いーっつもこれなんだから……」 文句を垂れながらも、最上は少しだけ微笑む。 そして、食堂から持ってきていたキンキンに冷えたお絞りを提督の顔の上に広げた。 「ほらほら! シャキっとしてよ提督!」 そして乱暴な勢いで、ぐわしぐわしと脂っぽい顔をすっかりふき取ってやる。 「んが……ふわ~あぁ」 ここまでやって、ようやく提督の目覚めは半分。なおも寝ぼけ眼な状態である。 「提督、机から脚下ろして」 「あー」 「こっち向けて」 「んー」 寝ぼけている提督は、秘書艦娘――最上の言いなりだ。 背もたれつきの立派な回転椅子をくるんと半回転させ、ブーツを最上のほうに向ける。 「身支度ぐらい、自分で出来るようになってよ……ったく」 最上は腕をまくると、キュロットのポケットから布きれと靴墨、それからブラシを取り出し、 ブーツをピカピカに磨き上げる。 執務室の壁掛けの時計は、ヒトフタゴーサン。 ――おっ、いいタイムじゃない? 僕。 「はい、立ってー?」 「むー」 「襟正して、ボタン掛けてー?」 「はー」 「タバコいっぷくー?」 「すぱー」 「コーヒーひとくちー?」 「ごくー」 ここでようやく、最上は腕組みをして、目の前にもっそり立っている我らが提督の姿を つま先から頭のてっぺんまで確認する。 「靴よし、服よし、顔……まあよし」 最上はふんっと鼻息を荒くして笑うと、背伸びして提督の頭に帽子を返した。 「よし! 提督、完成! 至急、会議室に出撃されたし!」 「ふわあ~あぁ、ありがと、もがみん……『大将』……」 あくびまじりの提督は最上の顔を半開きの目でちらっと見て、気の抜けた敬礼をする。 「『大将』って何さ。僕は重巡洋艦、も・が・み、だよ!」 意味の分からない二つ名をつけられ、最上はぶすっとしながら敬礼を返す。 「ちゃんと名前を呼んでよね。僕まで笑われるだろ?」 「はいはい……んじゃ、後よろしくな……」 おぼつかない足取りで廊下を歩いていく提督の後姿に向かって、最上は火打石を振るう。 「提督、ちゃんと話し合ってよね? 途中で寝たりしたら、僕怒っちゃうぞ?」 提督はふらふらしながら背中越しに右手を振ると、階段の方へと消えていった。 「相っ変わらず世話が焼けるんだから、ホントに……」 自分以外誰もいなくなった執務室前の廊下で、最上はふうっとため息をつく。 そうは言いつつも、最上は提督の秘書という役割が気に入っていた。普段、特に寝起きは あんな感じだが、提督はああ見えて一応は提督になるだけの軍人である。 最上は執務室に戻り、建屋の正面玄関が見える窓から身を乗り出し、下を覗き込む。 ――あ、来た。 見れば、黒塗りの高級車が既に停車しており、そこから数人の将校がぞろぞろと敷地内に 歩いてきたところだった。我らが提督も玄関から現れ、先ほどとは別人のような きりっとした足取りと敬礼でもって迎え入れる。 最上は窓辺に押し付けた股の辺りで身体のバランスを取りながら――そうしているのが 何だか最上は好きなのだ――足をぶらぶらさせ、提督の姿が会議室のある建屋に消えるのを見届けた。 ボォン……。 執務室の柱時計が、ぴったりヒトサンマルマルを告げる。 「ふー……」 この執務室に押しかけて、ここまでたったの10分だ。 しかし、何より大きな仕事をやり遂げたような不思議な充足感が、最上の心を満たす。 自分達のリーダーのいちばん近くで仕事が出来る光栄さもあるし、鎮守府全体と海までを 一望できるこの窓を独り占めできるのも、最上は好きだった。 今頃は、駆逐艦娘で賑やかな第四艦隊が製油所地帯海域の偵察を終え、この穏やかな鎮守府へ 針路を取っている頃だろう。 ――今日も、明日も……平和が続くと良いけどな。 それだと艦娘の自分は仕事が無くなってしまうし、事実、到底無理なお話だ。 しかし、だからこそ最上は思うのだ。 雨でも、風でも、毎日こうしてこの風景を見続けられるなら、 提督や仲間の艦娘たちと一緒に鎮守府で過ごしてける日が続くなら、そして―― ――誰一人欠けることなく、少しでも長く、みんなと過ごせたなら良いな。 コン、コン。 「最上ちゃん、最上ちゃん?」 開け放たれたままの執務室のドアが控え目に叩かれ、最上は背中越しに振り向いた。 ドアの陰で、短めの黒髪をサイドに纏めた艦娘が、小さく手を振っている。 「あっ、長良!」 「司令官、会議行った?」 最上は頷きながら、こちらの様子を伺っていた長良を手招きした。 「大丈夫だって。僕しかいないから。コホン……君、入りたまえ」 長良はくすくす笑いながら、執務室のドアをくぐった。 「ウチの司令官、そんなじゃないし……って……? プッ、ククク……!」 最初は最上の真似事で笑っていたであろう長良が、最上の顔を間近で見るや、今度は 口を押さえて噴き出してしまった。 「ん? 長良、どうかしたの?」 「だって……ハハハ! 最上ちゃんの、その顔! ホントに司令官ごっこするつもり?」 「はあ!? 顔……って」 黒のサイドテールを揺らして笑う長良に指摘され、最上は慌てて窓ガラスに自分の顔を映す。 「あーっ!」 最上の鼻の下には、真っ黒なひげが横一文字に描かれていた。 見れば、両手が靴墨で真っ黒だ。 ――もしかして、さっきの『もがみん大将』って……ぐぬぬぬ! 「んもーっ、提督! 気づいてたなんて! 僕、本気で怒ったかんねー!」 悔しさと恥ずかしさがない交ぜになって、最上はぶんぶん拳を振り回した。 「アハハ。でも最上ちゃん、結構似合ってるよ?」 「あーっ、何? 長良までそんなこと言うの?」 「じょ、冗談だよ、冗談!」 思い切り頬を膨らませた最上に、長良もたじたじ、苦笑いで話題を変える。 「そ、それよりさ。午後、時間は大丈夫?」 「そりゃあ、もっちろんさ!」 提督の顔を拭いたばかりのタオルで自分の顔もごしごし拭きながら、最上がぱあっと 笑顔を見せた。 「走り込みでしょ? 行こう行こう! 第四艦隊が帰ってくる前に!」 「よしきたあ!」 長良はぐっとガッツポーズを見せ、こちらもにっこりと笑う。 「あ、でも長良、その前にさ」 「え?」 「ちょーっと掃除、手伝って」 バツ悪そうに最上が指差すその先には、真っ黒な指紋でべっとり汚れた窓枠があった。 ~鎮守府 営舎前 ヒトサンサンマル~ 「さぁーって、今日もコンディション最高! ひとっ走りいきますかあ!」 長良はぎゅっとハチマキを締めなおすと、手足の関節を入念にほぐしていく。 長良は袖の無い紅白のセーラー服に膝上丈の赤袴、それにニーソックスという、いつも通りの 服装のままだ。しかし艤装を解いたその姿は、艦娘たちの中でも一際陸上で運動するのに 適している服装だといえそうだった。ただ一点違うとすれば、腰の後ろにドラム缶を模した 水筒がくくりつけられているということだった。 「気合が入っているねえ、長良。よーし、僕も負けないよ」 ぐいぐいと腰を捻って体操する最上は、エンジ色のセーラー服の上着だけを脱いで、 白のタンクトップとキュロットという軽い出で立ちだ。長良の走りこみに付き合うときは、 いつもこの格好だった。 「ま、航続距離なら僕に軍配が上がるからね?」 「瞬発力だったら、長良の脚にだって分がありますから!」 準備体操をする二人は笑顔だったが、内心は本気だ。 負けず嫌いの艦娘の目線が、照明弾を思わせるほどの火花を散らす。 「がんばれー ふたりともー」 「お昼ごはんのすぐ後だってのに、よくやるよねー」 営舎で休んでいる非番の艦娘たちも、二人の走りには興味しんしんだ。 いつの間にやら、営舎の窓には見慣れた顔が幾つも並んでいた。 計らずも観客を背負った最上は、自分の中のエンジンがごうんと力強く動いたのを感じた。 横に並んだ長良も同じのようだ。その場で小さくぴょんぴょんと跳ねるたび、表情が リラックスという名の深い集中に満ち溢れていく。 「ふたりともー いいー?」 待ち切れなさそうな営舎の二階からの声に、最上と長良は手を振って―― 「よーい どん!」 背中から聞こえたスタートの合図と同時に、二人は秋の爽やかな風となって走り始めた。 「おっ先にぃ!」 先手を打ったのは長良だ。滑るように加速していく背中を見て、最上はにやりとする。 ――どうやらコンディション最高っていうのは、嘘じゃないみたいだね。 こうやって長良と走るようになったのはいつからだろうか。もう良く覚えてはいないが、 最上は長良と何かとウマがあった。提督が居ないときなどは食事を一緒にとることも多いし、 他の艦娘に比べてオンナノコオンナノコしていないところが、最上には何だか安心だった。 それに何より、長良の快活で裏表の無い性格や、朝昼晩と欠かさず走り込みを続ける実直さと 体力を、最上は尊敬していた。 作戦中の素早い動きや、波間を縫って深海棲艦に肉薄する姿は、持ち前の勇敢さと日ごろの 鍛錬による自信の賜物に違いない。 ――僕が提督だったら、長良を秘書にしたいなあ。 そんな事を思いながら、最上も腕を振る力を強め、長良の背中に追いすがり……そして並ぶ。 「いきなりそんなに飛ばして……。大丈夫なのかい?」 「最上ちゃんこそ、長柄の脚に着いてこれる?」 鎮守府の外周を大きく回るランニングコースにも、秋が来ているようだった。夏は吸い込む だけで火傷しそうに暑かった空気も、軽口を叩きながらでも走れるくらいに快適だ。 快晴の空に見上げる太陽も、汗ばむ肌に心地良いぐらいである。 「すっかり良い季節だねえ」 「本当に! コンディションも良いわけだわ~」 ランニング日和というよりも行楽日和という方がしっくりくる、柔らかな昼下がりのせいだろう。 工廠の裏を抜け、鎮守府の港近くの小さな砂浜へと到達する頃には、ふたりのボルテージは すっかり下がっていた。 「それで酷いんだよ、提督ってば。僕の顔見て『もがみん大将』なんて!」 「アハハ。今度寝てるときに、逆襲してみたらいいんじゃない?」 「あっ、いいねえ、それ! いまに見てろよ~、提督~!」 そんなお喋りが弾む、楽しいジョギングになってしまっている。 「それにしても、長良はスタイルがいいよねえ」 併走する長良のしゃきっとした姿勢を見て、最上は思ったことをそのまま口にした。 「そ、そんなことないよ。ふつうだよ」 照れながらも、長良は少し嬉しそうだ。 「謙遜しなくていいって。ランニング以外にも何かしてる?」 「うん、簡単な筋トレかな。でも、やっぱり走り込みが楽しいんだけどね」 ほうほうと、最上は長良の四肢をまじまじと観察する。軽く日焼けした肌の下で、 長良の細いフレームを包むしなやかな筋肉が躍動しているのが良く分かる。 「やだ最上ちゃん、なんだかオジサンぽいよ? 視線が」 気づいた長良が、最上の肩を冗談ぽく肘で小突いた。 「でも良いことばかりじゃないよ。長良、また脚に筋肉ついてきちゃったみたいで」 「いいじゃない、筋肉! 海兵隊みたいなモリモリマッチョマンは困るけど」 「よ、良くないよぉ~」 長良は風に流れる黒髪に滴る汗を掻き分け、はぁっと意味ありげなため息を突いた。 「あんまり鍛えすぎるとボトムヘビーになって航行しづらいし、それに……」 「それに?」 「えぇっと、その……」 珍しかった。いつも歯切れの良い長良が、言葉に詰まって頬をぽりぽりと掻いている。 「どうしたの? 顔、赤いけど」 「そっその、最上ちゃん、あの……これは長良との秘密だよ? 内緒にしてくれる?」 最上は一瞬ぎょっとした。あの長良が、自分に内緒話をしてくるとは思いも寄らなかった。 よっぽど言いづらいことが、この長柄のボディーに隠されているとでも言うのだろうか。 ――うーん、約束事は慎重にすべきだけど…… 「良いよ。黙ってるから」 長良の均整取れた肉体の秘密が分かるかもしれない……という好奇心にあっさり負けて、 最上は二つ返事で小指を立ててみせた。 視線を泳がせていた長良だったが、最上としっかり指切りをして、ようやくこそこそ声で話す。 『その、あの……結構さ。筋肉って、重くてね。長良、最近体重がさ……』 「えーっ、たいじゅう?! なー……」 「やだ――! 最上ちゃん、声おっきいってばぁ――!」 なーんだ、そんなことかあ、という言葉が放たれるよりも早く、長柄の人差し指が最上の唇を ぎゅーっと押さえ込んだ。 『ヒミツだって、言ったばっかりでしょーっ?!』 殆ど口パクで叫ぶと、長良はおでこが当たりそうなくらいに最上に詰め寄った。 体重。その言葉一言だけで、この反応だ。 その先まで口走っていたら、一体今頃どうなっていただろう? ――あ、危なかったなぁー、僕。 作戦中に等しいぐらいに鬼気迫る長良に気圧され、最上の足は、ぴったり止まっていた。 「ご、ごめんごめん。僕が悪かったよ」 両手を合わせてぺこぺこ、最上が平謝りに謝ると、長良は「もうっ」とむくれて、どかっと 砂浜に腰を下ろした。ふたりは、丁度ランニングの半分を終えようというところまで来ていた。 「最上ちゃん、デリカシー無いんだから……」 「で、デリカシー……かい?」 普段殆ど耳にも口にもしない言葉が、しかも長良の口から飛び出して、横に座る最上はたじろいだ。 「そうだよお。最上ちゃん、全然気にしないの?」 「う、うーん……そういえば僕、もうずっと体重計には乗っていないね」 「はぁ~? お幸せですこと!」 呆れた表情の長良は、腰から水筒を外して飲むと、最上の頬にぴたっとくっつける。 「ひゃっ! ありがと!」 水筒を傾けると、キンと冷えた甘露が溢れ出し、レモンの香りと共に最上の喉を潤していく。 「ふーっ、生き返るぅ。長良のハチミツレモンは、本当に美味しいね!」 「間宮さん直伝だからね」 ひとくちふたくち味わって、もう一口飲んで、ようやく水筒を返す。 「でも何だろ、今日はいつもよりハチミツが薄目?」 「はぁ……ホントに最上ちゃん、何も気にしてないんだから……」 長柄のジトっとした非難めいた視線が、最上の身体の色んなところを突き刺す。 「長良ね、実は前から気になってたんだけど」 「え、僕?」 「そう、その……」 小さなためらいの後、長良は照れくさそうな早口で呟いた。 「最上ちゃん、いつもノーブラなの?」 「ノーブラ……ああ、うん。そうさ?」 長良の茶色い瞳が向かう先に気づいて、最上は事も無げに答えた。 タンクトップの襟元をぱたぱたしながら、そういえば……と思い出す。 「僕、ブラジャーって着けたことないなー」 「えぇっ、そうなの? 一回も?」 「一回も。だって持ってないし」 「まさか、一枚も?」 「一枚も」 ざぁ……んと、静かに寄せては返す波の音だけが、二人の間をすり抜けた。 長良はまるでその音を隠れ蓑にするかのように、座ったまま、そおっと少しだけ背伸びする。 そして、最上のはだけた襟元に視線を落とし―― 「あ、そ、そっか……そうなんだ。は、ハハハ……すみません」 ぎこちなく笑いながら、もじもじと膝を抱えて小さな三角座りになった。 「なんだい? 長良ってば、変なの!」 「だ、だから……すみません、ってば……」 「それじゃあ、そういう長良はブラジャーしてるっていうのかい?」 最上がたずねると、長良はもじもじしながら鎖骨の辺りをさすってみせる。 「長良は、してるよ? スポブラだけど」 「すぽ……ぶら?」 まったく聞いたことの無い単語だったが、心当たりにポンと最上が手を打つ。 「ああ、飛行機についてるアレ?」 「最上ちゃん、それスポイラー」 「違うの?」 「違う! ぜんっぜん違う!」 長良は「艦娘にスポイラー要らないでしょうが!」と不満そうに最上に詰め寄ると、 きょろきょろと周囲を伺い、意を決したようにセーラー服の襟元を引き下げ、中を広げて見せた。 「スポブラ! スポーツブラジャーのこと!」 最上は、長良の制服の暗がりの中に目を凝らす。石鹸とレモンの混じった香りの向こうに、 長良の胸をぴったりと覆っている桃色の下着が見えた。 「こ、これがスポブラだよ。分かったでしょっ!」 これ以上たまらないという感じで、長良はまたすぐに膝を抱えてしまった。 「ええっと……」 最上は思い出しながら、自分の胸の辺りでスカスカと手を動かし、ジェスチャーする。 「こう……肩紐とカップじゃなくて、何だろ。僕のよりもピッタリした、胸だけ覆った タンクトップ、みたいな……?」 「そう、そう!」 「そんなピタピタで、息苦しくないの?」 「ぜんっぜん! むしろ長良は動きやすいよ」 「ふーん?」 ――ホントかなあ? 生返事しつつ、最上はどうもピンとこなかった。 ――動きやすいって、胸が揺れないってことだよね? 一応ブラジャーだし。 今は外洋の任務にあたって鎮守府を離れている戦艦や、正規空母達なら話も分かる。 中にはドックの風呂に浮くような胸の持ち主さえいるのだ。あれを野放しにしておいたら、 両胸に水風船をぶら下げて動き回るような感覚になるのだろう。ブラジャーの必要性も頷ける。 しかし、長良の胸元はお世辞にも―― 「いやぁ、分かるよ? でもさ……っと、おおっと」 最上は慌てて自分の口を両手で押さえ、またしても飛び出しそうになった言葉を飲み込んだ。 「で、デリカシーデリカシー」 「も~が~み~ちゃ~ん~?」 急に周囲が暗くなり、最上ははっと頭上を仰ぎ――腰を抜かした。 そこには、歯をぎりぎり鳴らしながら涙目で最上を見下ろす、長柄の姿があった。 日輪を背負うその姿は、まさに護国の戦姫……いや大魔神である。 「わあっ、ななな、何だよ長良! 僕は何も言っていないだろッ!?」 「目は口ほどにモノを言うって言葉、知ってるよね……?」 長良の両手が、猛禽の爪のごとくワシワシと蠢いた。 今ならリンゴだろうと弾丸だろうと、豆腐のように握りつぶしそうだ。 「もう二度とブラなんかいらないように、長良が近代化改修してあげよっか……?」 その手が向かう先を察し、最上の背筋を冷たい汗が滴り落ちる。 「やっ、やめてよ長良! 早まるなって! きっとまだまだ大きくなるさ! ホントだよ!」 ブチィンと、長柄のハチマキが音を立てて千切れた。 「うううううるさーい! もう遅い遅い遅いッ! そんな言い訳、ぜんっぜん遅――」 パッパラッパラッパラッパパッパラー! 長良が最上に飛び掛らんとしようとした、まさにその時。 秋晴れの鎮守府に、スピーカーを通して乾いたラッパの音が轟いた。 その瞬間だった。 ばし、ばしばしばしいいいっ! 背中に、赤く鋭い雷のような衝動がほとばしり、最上は思わず「ひうっ」と声を上げた。 尻餅をついたままの最上をよそに、長良もその場に慄然と立ち尽くし、鎮守府の高台にある スピーカーを食い入るように見つめている。 ラッパの音がこだまするたびに、最上の頭の中で、胸の奥で、幾つものギアが次々と 噛み合い、海原を切り裂く鋼鉄の塊が動き出す轟音が迫る。きっと長良も同じだろう。 「「非常呼集……!」」 ランニングも。 ハチミツレモンも。 デリカシーも。 ブラジャーも。 そして、ふたりのわだかまりさえも。 艦娘たちのひとときの『非日常』は、ラッパの音がもたらす『日常』によって、既に遠く、 遥か夢の向こうへと追いやられていた。 そしてその代わりに、自分の中の『軍艦』が姿を現し、全身に熱い血を送り込んでゆく。 これが自分の本性なのかどうなのか、最上には分からない。 しかし、最上は感じるのだ。 ビーズを蒔いたようにきらめく水平線の彼方に迫る、倒すべき存在の陰、深海棲艦の姿を。 最上は長良に差し伸べられた手を取って立ち上がり、お互い目配せで「うん」と頷くと、 ここまで走ったときの何倍もの猛ダッシュで、営舎への道を引き返した。 背中を押し、大地を蹴る足を動かす、内なる衝動が命じるままに。 そう、心震わせる、あの『抜錨』の瞬間を求めて――。 =えんど=
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前回の話 「吹雪に魚雷の扱い方を教えてやれ」 重雷装艦となって間もない私たちが、提督に呼び出された。 早速重雷装艦の戦力が理解される時が来たかと思ったが、提督は私のそんな期待を切り捨てる命令を吐いた。 なんでそんな雑用のような任務をしなければいけないのか。 私はこの男に聞こえないよう小さく舌打ちした。 「うーん……」 北上さんが唸る。 こんなかったるい任務、断っちゃって。お願いよ。 心の中でそう念じたのが通じたのか、北上さんは横目で私に目配せする。 通じた? 通じたの? 通じたのよね!? しかし都合の悪いことに、北上さんが二の次を告げる前にこの男は動きやがったのだ。 「教えてやってくれ」 どういうわけか言葉遣いは少し腰の低いものに変わったが、私は一瞬にして憤りを感じた。 なんとその男は北上さんを一心に見つめ、あろうことか北上さんの両手を掴んで懇願してきたのだ。 私にとって存在そのものが気に食わないこの男が、私にとって大切な存在である北上さんに触れる。 そんな光景を見て私が我慢できるはずがなかった。 「なっ、あぁ貴方! 何してけつかる!! です!」 「は?」 思わず素の口調でものを言ってしまった。 この意識は別に上官である提督に対して無礼な態度を、ということではなく、 この男に素で接したくない、という精神的装甲に所以しての意識である。 何を言っているのか分からないことから察するに、この男の生まれは私と同じところではないらしい。 それだけは安心できた。 生まれが同じだと分かったらそれだけで反吐が出る自信がある。 提督は私へ首を回転させ、その顔を唖然とさせているらしい。顔は眉一つ動いていないけど。 ああ、その首が二度と回らないようにしてあげたいわ。 「い、いえ、なんでもありません」 「……嫌だってさ」 北上さんが私の言いたいことを言ってくれた。 そうよ。それでいいのよ。 任務受託を拒否してこの執務室を出て終わり。 そういう流れを期待したが、問屋はそうは卸さないらしい。 「なら大井が教えてやれ」 「……はあ?」 あらやだ。また素で返してしまったわ。 私の顔が、眉間が歪んでいることも自覚できる。 口調がよく崩れる奴だな、などと実は何も考えていないようにのんきに提督が呟いた。 「北上に教えさせるのが嫌ならお前がやれ。お前等なら他の艦より少しは分かるだろ」 「あら提督。この文書、出撃命令が書かれているではないですか。私たちなら簡単に敵を殲滅させられますよ」 艦種の名前が"重雷装巡洋艦"なんてものだから、それは考えなくとも分かっているのだろう。 魚雷を扱うなら私たちの右に出る者はいないと思われること自体は悪くない。 それだけの戦闘力があると分かっているなら使い方を間違えるな。私たちを暇にさせるな。 私は暗にそういう訴えを込めてちょうど執務机に置かれていた一枚の紙を掲げる。 「その任務は他の艦に遂行させる。今のお前等の任務は吹雪への講義であって出撃ではない」 「……なんですって?」 ああ、今魚雷が手元にあったら即座に振りかぶっていると思うわ。 私たちは戦闘としては使い物にならないと? 馬鹿にするな。 どちらかと言えば旧式艦に分類される私たちでもいい戦力を持っているのに、 もはや"特型駆逐艦"とかいう たすきが藻屑塗れになっているあの役立たずの詐欺艦は、教えたって無駄よ。 しかし口には出さない。 私が抑えて黙っているのをいいことに、この男は私を睨むかのように真顔で見つめ調子に乗り始める。 「大井は教える事自体が嫌だと言うなら、お前のこれからの処遇を少し厳しく検討せねばならなくなるのだがな」 こんな無能な男の下に配備されるとは、運命とはとても残酷なものだ。 艦隊を組んでも鎮守府周辺海域を徘徊させる事しかできないこの男も "提督"という たすきが煤塗れになっているくせになんて生意気な。 はっきりと戦果を示せないのに大口を叩くだけの上官は最悪だ。 黒い感情に任せて提督へ目を尖らせる。 しかし提督は張り合っているのかいないのか真顔のまま。 鳥のさえずりさえ入ってこない険悪な睨めっこが続く。 それを中断させたのは傍らの北上さんだった。 「……あーもうやめやめ! 大井っちは少し協力しないと駄目だよ。吹雪にはあたしが教えて……」 「私がやります」 即座に私は北上さんの言葉を遮るように被せた。 ごめんなさい北上さん。でもここは私に任せて。 不本意ながら気に食わないこの男に協力する形になってしまうが、背に腹は変えられない。 提督の言う"処遇"がどういったものか鋭く推測はできないけど、 将来的にこの男が私を残して北上さんだけ艦隊に組み込むような事でもあれば私は発狂する。 「北上さんの手を煩わせるくらいなら、私がやります。……提督のさっきの言葉、覚えておきますからね? 下手な指揮で負けておめおめと帰投させるような事があれば、ただじゃおきませんから」 「そうかい。ではそんな事になったら私は暫く雲隠れしておくさ。吹雪の事は頼んだぞ」 渋々ながら任務を受託すると分かったとたん、この男は淡々と踵を返して椅子へ戻っていった。 この男は私の攻撃を回避することが得意らしい。 ああ腹立たしい。気に食わない。 この男がいる部屋には長居したくないので、北上さんの腕を掴んで礼もせず執務室を後にする。 「……行きましょう、北上さん」 「大井っち、痛いってば」 「はあ、はあ……、あ、ありがとうございました……」 「明日もやりますからね」 海上で、満身創痍で息絶え絶えながら頭を下げた吹雪ちゃんに、私は岸壁からそう告げる。 満身創痍といっても、敵が出たとか私たちが相手になって戦闘演習を行ったとかではない。 自分で何度も派手に転覆したり的に衝突しただけだ。 話を聞いただけでも出撃どころか遠征さえ縁がなさそうな艦だと思ってはいたけど。 ――やる気はあるし勉強もしているみたいだけど実技では……。特型とは言うけど大丈夫かしら―― 「なんだかんだ言って、大井っち途中から熱入ってたよね~」 私は横から飛来した北上さんの言葉で我に返った。 私は無意識に顎から当てていた手を離し、弁明に努める。 「えっ!? だ、だって、提督がどうしてもやれって言うから!」 「明日もやれとは言ってなかったと思うけどね」 「この先一緒に出撃して足を引っ張られるような事にでもなったら困るのよ! 全く!」 …………………… ………… …… 「という具合にさ~」 「もう! やめてよ北上さん!」 あの頃とは違い、今や執務室は畳張りとなった。 私は左舷で炬燵の中で胡坐を掻く北上さんを制止する。 恥ずかしいからそんな昔の話は持ち出さないでほしいと訴えかけるばかりだ。 終始話を聞く事に徹していた対面の提督は私へ疑問を投げかける。 「一つ聞きたいのだが、あの時の"何してけつかる"とはどういう意味だ?」 「近畿の方言で、"何してくれてんの"という罵倒です」 そう説明したとたん、提督は顔を歪ませた。 あの頃から見ればこの人は驚くほど感情を露わにするようになった。 嬉しくないといえばそれは嘘になるのだけど、今ばかりはあまりいい気持ちではない。 私は目を細めて問いただす。 「……ニヤニヤしてどうしたんですか、気持ち悪いですよ」 「だそうだ、北上よ」 そこで北上さんに振る意味が分からない。 即座にそちらを見やると、北上さんも提督と同じように顔を歪ませていた。 ……何これ。私は見世物? 北上さんは俯いて暗い顔になってしまった。これ、私のせい? 「あたし気持ち悪いのか~。大井っちに嫌われちゃったな~」 「えっ? あっ、気持ち悪くないです! 嫌ってないです!」 ニヤニヤする北上さんも素敵です! 嫌う理由になりません! 嫌う可能性零です! 私の言葉で安心したのか北上さんは調子を戻す。 一つ安堵。したがここでも問屋は卸さないようだった。 「あちゃあ。提督の事は嫌いになっちゃったのか~」 「……そうか……。大井……」 ちょっと北上さん! 提督に自信喪失を移すのやめてください! 面倒臭いじゃないですか! 提督もいい年してそう軍帽が落ちるくらいに背中を丸めて俯くの、みっともないと思いませんか! 「"提督も愛してます"っていつも言ってるでしょう!」 「感情が篭ってないのだが」 「こっ、こういうのはむやみやたらに言うと価値が下がるんです!!」 激しく突っ込み役に回るばかり、私は言葉が矛盾してしまったかもしれない。 私は昂るあまり炬燵の天板に両手を突いて抗議していた。 やだ。少し顔が熱くなってきちゃった……。 炬燵か隅のダルマストーブ、少し焚き過ぎじゃないかしら……。 私が悶々としていると、急に北上さんは吹き出した。 「やっぱりさ。大井っちはからかうと面白いよね」 「分かっているじゃないか」 からかっていたの!? そして今までの話を私は全て真に受けていたと? 完全に見世物になってしまった。もう嫌だ。数分前の私を魚雷で殴って気絶させてやりたい。 この二人、こんなに意地悪だったかなあ……。 あの頃からは想像つかないが、この二人は意外と相性がいい。 改めて意気投合したらしい提督と北上さんは自然と同時に強く握手を交わした。 私、置物にされていないかしら。いや、見世物だったわね。 それから何故か提督と北上さんから同時に視線を向けられる。 何ですか。その、私が不調に見えるかのような顔は。 「……おや、もう言わないのかな? "何してけつかる!!"」 「"何してけつかる!!"」 「やめてください!!」 好き勝手に振舞う提督と、それに便乗する北上さんを制止する任務を、 やはり不本意ながら遂行させる流れになってしまった。 この二人は、あの頃の私の事を回顧しているんだろう。 でも過去は過去で、今は今。 この人の存在そのものとか、提督が北上さんに触れることが気に食わないとか、 私はそういった思考回路をこの人に改装されてしまった。不本意ではなく本意で。 だから、今の私がこの光景を見て黒い感情を生む事はない。 北上さんだけでなく、提督も大切な人だから。 でも、私で遊ぶのはまた別の話ですからね? 私は引き続きこの二人を制止する任務に取り掛かった。 これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
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仕事が立て込んでいる時の為に執務室には布団と枕を一式用意しているが、もちろん私専用のプライベートルームは存在している。別の基地に勤める友人の司令官は仕事で使う執務室のすぐ隣に個室を用意していると聞いたが、私は仕事とオフの線引きを明確にしないと気がすまない性分だった。執務室の隣にプライベートルームを置いてしまうとどうしても仕事とオフの切替がやりにくい。軍という組織の仕組み上、基地の敷地外でそういった場所を用意しても容易に帰ることは出来ないので、敷地内で極力執務室から遠い場所にプライベートルームを作った。その部屋には軍事関係の物は軍服以外は一切置いていない。基地内外の移動で軍服の着用を義務付けられていなかったら軍服さえ執務室に残して置きたかった。物でさえ仕事に関わる物はプライベートルームからは遠ざけたかったのだから、仕事で関わっている艦娘たちをそこへ招き入れることも一度もしたことがなかった。私は彼女たちのことは誰一人嫌っていない。むしろ信用しているし、有り難いことに彼女たちは私のことを信頼していた。しかし私にとってみれば彼女たちは仕事のパートナーであって、それ以上でもそれ以下でもない。艦娘は今世界中で起こっている化け物との戦争で必要な戦力だ。彼女たちがいなければ我々人間は既に深海から生まれた化け物に侵略され最悪絶滅していたかもしれない。その点に関しては私は艦娘に感謝をしているし好意を抱いている。だがその気持ちに恋愛の類は一切ないのだ。この基地の中で男は私の他にもいたが、艦娘と対等に渡り合えているのは私だけであった。己の司令官としての手腕もそれなりの功績をおさめているので艦娘たちからの信頼も厚い。そうなれば自然とその信頼を恋愛感情の一種として捉える艦娘も出て来る。艦娘はその凄まじい戦闘力を持ちながらも、感性は普通の女性そのものだ。そして男と女がいる環境で愛だの恋だの浮いた話が出てこないはずがない。私に積極的にアピールする艦娘も何人かいたが、私はどうしてもそういった感情を抱く気にはなれなかった。上手く誤魔化したり流したりして彼女たちのプライドを傷つけないように接するので精一杯だった。艦娘は美しく、可憐で、いじらしく、可愛らしい存在だ。なんとも魅力的な外見である。それでも私は艦娘を一個人として見れなかった。艦娘が私を一人の人間として接しても、私は彼女たちを仕事の一つにしか見ていなかった。だから純粋に私に好意を抱く艦娘には申し訳なさを感じていた。 そんな私の徹底した拘りの隙をついて、数ヶ月前から数十冊のスケッチブックが部屋の本棚に置かれるようになった。表紙の色は何色か被っていたが、黒色だけは一冊のみだ。黒のスケッチブックだけは白紙のページが半分以上残っていたが、他の色のスケッチブックには我が基地にいるほとんどすべての艦娘とスタッフ、そして海域に蔓延る深海棲艦がページいっぱいに描かれていた。スケッチブックに描かれた者たちは今にも動き出しそうな程生き生きとしていた。特に最近完成した瑞鶴の力強さには見ているこちらも武者震いをしてしまう。久々の出撃に赴く瑞鶴の姿を描いたものだ。雲一つない晴れ渡った空の日、私の部屋の窓の傍で椅子に座り、スケッチブックは窓の縁を背に膝の上に立て、目は港にいる第一艦隊と鉛筆の黒に彩られていく白の空間を交互に見ながら、描いていたのだ。私も窓から港を見たが、誰かが港にいることは分かってもそれが誰かは見分けはつかない。いくら視力に優れた人間でも私の部屋から港にいるもの全員を判別することなど、裸眼では不可能だ。しかし彼女は違った。私の部屋から港までの距離なら顔の表情まで分かると楽しそうに言っていた。演習場で厳つい顔をしている私の姿も分かるとも。自分の顔など意識をしたことはないが、そう言われた時は少し気恥ずかしかった。その翌日は演習場で艦娘たちの訓練を指示していた時に彼女に見られていることを何となく意識してしまい妙な表情をしてしまったのだろう、その日の業務を終えて部屋に帰った時に彼女にそのことでからかわれた。しばらくしたらその状況も慣れて演習場でも普段通りに戻れた。彼女はつまらないなぁ、と残念そうに呟き、私は苦笑した。 彼女はいつも私の部屋にいた。私が帰る時は必ず窓の傍にスケッチブックを抱えながら座っていた。私を見るとおかえり、と明るく出迎えてくれた。私は誰も自分の部屋に招き入れたくなかった。それが艦娘なら尚更だ。しかし彼女だけは違った。けれども追い出す気にはなれなかった。それに部屋に彼女がいると不愉快などころか、居心地の良さを感じていた。私はきっと彼女に艦娘に抱くモノとは違う好意を感じていたのだ。しかし、私には分かっていた。それは純粋な好意ではなく、ただの―――――― 「提督!朝だよ朝朝~!起きて~!」 グイグイと体を揺さぶられ、目を開けると茶目っ気のある笑い顔が私を見ていた。半身をゆっくりと起こして瞼をこすり、隣に目をやった。 「おはよう提督!」 「……おはよう、秋雲」 視界にパジャマ姿の秋雲が映っていた。まだ眠気眼の私の頬を秋雲はペチペチと軽く叩く。 「だーいじょうぶー?昨日はちょっと飲みすぎたんじゃないのぉ~?」 昨晩は月に一度の軍士官と議会の集まりで酒を飲んだ。酒は弱い方ではないが、少し飲みすぎたのかもしれない。一晩寝ても酔いの気分がまだ残っていた。私は掛け布団を横に除けて立ち上がった。首にかけていた二つの鍵のペンダントが小さな金属音をたてた。 「これぐらいどうってことはない。午後には楽になる」 若干ふらついた足取りで洗面所へと向かう。蛇口を捻って水を出し顔を洗った。何度か水を顔にこすりつけてから傍にかけていた白いタオルで顔を拭いた。吹き終わるとタオルを元に戻し後ろを振り返ると、秋雲が私と彼女の布団二式を畳み終えたところだった。朝食の準備を始めようと思い台所へ向かおうとしたが、ちゃぶ台には既に食事が用意されていた。 「秋雲さんのスペシャル朝食だよ~」 したり顔で秋雲は言った。 「二日酔いの提督のために作ってあげたんだから、味わって食べてよぉ~?」 いつもなら私が朝食を作っているが、秋雲が気を遣ってくれたのだろう。その行為が嬉しくて自然と顔が綻んだ。 「ありがとう秋雲」 私と秋雲はちゃぶ台の前に座った。台には箸、白米、目玉焼き、味噌汁、焼き魚が並んでいた。秋雲の前にも同じものが置かれている。私が手を合わせると秋雲も手を合わせた。 「いただきます」 箸を手に取りまずは白米を一口食べる。出来立ての米の歯ごたえとほのかな良い香りに噛みながら涎が沸き出た。次に味噌汁の椀を持ち上げて端を唇につけ傾けた。味噌の香りと共に味が口一杯に広がる。ダシの煮干が良いアクセントになっていた。 「どうどう?おいしい?」 秋雲が興味深々に聞いてきた。私は椀を口から離す。 「あぁ、おいしい。お前も料理は出来るんだな」 私の褒め言葉に秋雲はフフンっと自慢げに腕を組んだ。 「秋雲さんは絵だけが取り得じゃないのさぁ~まっ 原稿で忙しい時はカップ麺とか簡単なものですますんだけど」 「そうか」 秋雲の話を聞きながら私は箸を進めた。秋雲は食べながらあれやこれやと話を始める。原稿がどうの、絵がどうの、料理がどうの。私はたまに相槌を打ったり口を挟んだりするが、基本的に秋雲の話に耳を傾けて静かにしていた。ここは私と秋雲の空間。この部屋で秋雲と過ごす時間が今では日常の一部と化し、私はこの時間を何よりも大事にしたい気持ちが強くなっていた。 食事を終えると二人でごちそうさまをした。秋雲は食器を片付け、私は歯を磨く。歯を綺麗にしてから洗面所のカーテンを引いて秋雲からこちらが見えないようにした。壁にかけていた軍服を取り着替える。上着のボタンを下から上へと留めていく度に気持ちが引き締まっていった。首につけているペンダントを襟の中に入れ、鏡で身だしなみのチェックを完了するとカーテンを開けた。秋雲は軍帽を持って目の前に立っていた。私は軍帽を受け取ると頭につけ、また鏡で確認する。よし、準備完了だ。 「ひゅ~提督かっこいい~」 秋雲のからかうような声を適当に流し、私はドアノブを掴んでドアを開けた。 「あ、ねぇ、今日は帰りは遅くなるの?」 ドアノブに手をかけたまま、私は少し考えた。 「多少は定時を過ぎるかもしれないが、八時までには戻るはずだ」 「そっか~じゃあ夜ご飯も作ってあげよっか?」 「いいのか?」 「いいよいいよ~今日は秋雲さんの特大サービスデイでーす」 秋雲は調子良く笑った。私もつられて目元が緩んだ。 「楽しみにしている。……ではいってくる」 ピンっと張った腕が目の前で大袈裟にブンブンと揺れた。 「いってらっしゃーい!」 笑顔で見送られ、私はドアを閉めた。襟の中からペンダントを取り出し、鍵の一つを鍵穴に差し込む。 ガチャリ。 それから最近ドアの左に取り付けた南京錠をセットした。残りの鍵で南京錠を閉める。 ガチャリ。 これで誰も私の部屋へ入れない。 秋雲も私の部屋から出て行かない。 ここは私と秋雲の空間。 誰にも邪魔はさせない。 私はペンダントを再び襟の中へ戻すと、仕事場へと向かった。 ------------------------------- 執務室へ通じる廊下を歩いているとドアの前に見慣れた白い長髪が見えた。女の顔が私の方に向けられる。 「おはようございます提督」 「おはよう、翔鶴」 翔鶴はドアノブを引いてドアを開けた。私は会釈をすると執務室へと入り、やや遅れて後ろからドアの閉まる音が聞こえた。 「お体は大丈夫ですか。いつもより少し気分が悪そうですが」 「昨日は少し飲みすぎたが、昼には酒も抜ける。気にしなくていい」 「ではお茶を用意しますね」 そう言って翔鶴は給湯室へと消えた。私は執務机のリクライニングチェアーを引いて腰かけた。座り心地のよい感触に私は安心して背中をもたれさせる。緩慢な動きでノートパソコンの電源をいれパスワードを入力してロックを解除すると翔鶴が電気ポットと湯飲みを乗せたトレイを持って机の前まで来ていた。書類や本が置かれていないスペースにトレイを置き、湯飲みを私の前に差し出した。 「ありがとう」 感謝の言葉を述べて湯飲みを手に取る。手に伝わる仄かな温かさに気持ちが和らいで口をつけた。 「第二艦隊は予定通り朝の11時に帰投するそうです。第一艦隊の出撃の準備も整っています」 「そうか。出撃は第二が帰って来た後だ。また第三を午後13時からタンカー護衛任務に送る。メンバーは……旗艦を龍田、時雨、白露、村雨、以上4隻だ」 「了解しました。第一の編成に変更はありませんか」 「ない。予定通りだ」 「演習はどうしましょう」 私はデスクトップにある船のアイコンをクリックした。数秒後にこの基地にいるすべての艦娘の名前のリストが出てきた。一覧にザッと目を通して頭の中で編成を考える。 「旗艦を大井、比叡、ヴェールヌイ、阿武隈、那智、羽黒の6隻。午前も午後もこのメンバーだ。大井は……もうすぐで改二にできるか」 大井の名前をクリックして彼女の現時点でのステータスを確認した。北上は既に改二になっており第一艦隊の主力として活躍していた。大井も改二にして改修すれば一ヶ月以内には北上と一緒に第一に組ませられるだろう。 「……演習はそのメンバーでよろしいのですね」 確認の声に私は頷いた。 「あぁ、頼む」 「……本当に?」 私は顔を上げた。翔鶴は不安そうな目で私を見ていた。 「何か問題でもあるのか」 翔鶴は目を伏せる。 「……了解しました」 その言葉には不満が滲み出ていた。私はそれに気付かない振りをしてディスプレイに目を戻した。 「翔鶴も第一で出撃だ。秘書の仕事はもういい。お前にとっては初めての南方海域への出撃だ。念入りに準備をしろ」 「……はい」 翔鶴は頭を下げるとドアへと向かってた。ドアを開けて執務室から出ていく間に翔鶴の視線を感じたが、私はノートパソコンから目を離さなかった。バタンと閉まる音を聞いてから私はドアへ目を向けた。 翔鶴の不満の原因は分かっている。しかし今の私にはその不満を解消してやる気持ちが全くなかった。任務遂行に支障をきたさないからだ。翔鶴は不満を持っても私の決定に決して逆らわない。私が彼女の上司で、これは仕事だからだ。 私は提督という立場に甘えていた。 --------------- ヒトマルマルゴー。 書類の処理をしていると控え目なノックの音が聞こえた。ガチャリとドアが開き、失礼しますと声がした。翔鶴だ。 「提督、議会の方がいらっしゃっています」 私は耳を疑った。 「そんな話は聞いてないぞ。何故突然」 「はい、何でも近くに来たからついでに顔を出されたようです。どうなさいますか」 「どうもこうも……分かった。今から行く。翔鶴は同行しなくていい」 「分かりました」 翔鶴は再び部屋を出ていった。私は頭を押さえた。議会の人間とは昨晩の集会で酒を飲み交わしたが、しばらくは顔を合わせたくなかった。だからといって挨拶もせずに帰らせるのは相手の気分を害するだろう。私は気分がのらないままチェアーから立ち上がった。 ------------------- 「やぁ提督!昨日ぶり!」 応接室に入った私に朗らかに挨拶してきたのは、議会に在籍している友人だった。 「訪ねるなら訪ねるで連絡をくれないか。こちらは常時暇ではないんだ」 私の文句に友人は小気味良く笑った。 「まぁまぁ固いことは言いなさんな。俺は昨日みたいな集会がない限りここらへんは滅多に来ないから色々ぶらつきたいんだよ。それに」 友人の口元がにやついた。 「艦娘っつーのを見てみたかったんだ。いや~可愛いねぇ、翔鶴ちゃんだっけ?髪が白い子」 私は思わず苦笑した。いかにも軟派な友人らしい。 「ここに案内されるまでに他にも女の子を見たけど、子供もいるんだな~選り取り緑じゃねーか。羨ましいね」 「あんまりふざけたことを言っているとお前の奥さんに言いつけるぞ」 「おいおい!勘弁してくれよ!」 友人は顔の前に手を合わせる。やれやれ、私は溜め息をはいた。 「……基地内を見たければ案内をつけよう。翔鶴は出撃を控えているから別の艦娘にやってもらうが構わないか」 「おうよろしく!オススメの可愛い子ちゃんで頼むぜ!」 「では、私は仕事が立て込んでいるから失礼する。十分以内に案内をここに寄越そう。あと食堂にも寄るといい。腕のいい料理人がいるんだ」 そう言って私は部屋を出ようとした。 「なぁ、待てよ。そう急いで片付けねぇといけねぇやつなのか」 友人の言葉で私の足が止まる。私は後ろを振り返らなかった。 「あぁ、そうだ。私は忙しいのでね」 「翔鶴ちゃんから何も聞いてねーの?」 翔鶴から?その言葉が気にかかり体を友人の方へ向けた。 「お前のお陰で南方海域に進出できたろ?その功績を讃えて国から賞状と勲章が貰える話」 「…?その話は確か」 「そ、お前は辞退するって言ったが… メンツってもんがあるんだ。議会のお偉いさん方はお前の気をどうにかして変えさせろって俺に念を押してね…ショージキ参ってる訳よ、お前の頑固さには」 昨晩の酒の席でも友人だけではなく他の人間からもその話を再三された。御託はいいからとにかく素直に貰えと。なんなら多少のお小遣いもやってもいいと。 「ただ受け取るだけじゃねーか。何かをしろって話でもない。受け取るだけでクソを出すより簡単に羨ましがられる名誉を得られる」 「…今でも充分と言えるほどの評価を得ている。これ以上は私には釣り合わない。それに私よりも艦娘にこそ賞状や勲章は与えられるべきだ。私は単に作戦を考え、指示をしただけだ」 「軍と政界ってところはまだまだ男社会でさぁ……”艦娘の戦果をお前が代表して受け取る”、これでもダメか?」 例え友人に説得されようとも、私の意志は変わらない。 「艦娘にはあっても、――――――私自身に受け取る資格がない」 静かな時間が流れた。友人もついに諦めたのだろう。私はドアノブを引いた。 「――――――臆病者め」 憎まれ口に思わず口元に笑みが浮かんだ。今の私にはお似合いの言葉だった。 「失礼する」 私は応接室のドアを閉めた。左手につけている腕時計を見ると十時五十分を指していた。この時間なら第二艦隊の出迎えが出来そうだ。私は港へと足を進めた。 ------------------------------- 私が港に着いた頃には翔鶴が既に第二艦隊の旗艦の神通と話をしていた。周りにいた第六駆逐隊の雷が私に気付いて「司令官ー!」と嬉しそうに呼びかけた。 「ただいま司令官!資源いっぱい取ってきたわよ~」 雷が自慢げに言った。電も「なのです!」と便乗する。 「いつもより量が多いですよ。大成功ですね」 翔鶴が第二が持ち帰った箱の山を指差した。工廠スタッフの妖精がえっちらほっちらと箱を工場へと運んでいく。 「みんなよくやった。流石だな」 「当然よ!一人前のレディーなんだからこれぐらい朝飯前なんだから」 暁がツンとした態度でいる隣で響は無言で頷いた。その様子が微笑ましい。 「疲れただろう。今日はもう休んでいいぞ」 はい、と第二が返事をした。私と翔鶴以外は寮へと向かって行った。二人きりになったので私は話を切り出した。 「翔鶴、友人から私に何か言うように言われていたのではないか」 はい、と返事が聞こえた。 「賞状と勲章の件は、提督にはお考えがあって受け取らないのですから私が口を挟む必要はありません」 それに、と翔鶴は続ける。 「私は賞状にも勲章にも興味はありません。他の艦娘たちもそうでしょう。誰も貴方の判断を咎めません。深海棲艦もまだいますからね」 翔鶴は海の向こうを見据えた。私もそちらに目を向ける。私には水平線しか見えないが、翔鶴の目には何が映っているだろうか。あの化け物たちが見えるのだろうか。 「怖いか」 私の問いかけを聞いて翔鶴は私に振り返る。目の前の顔はこれからの出撃に戸惑っているようにも、期待しているようにも、恐れているようにも見えた。翔鶴がここへ来たのは数週間前のことだ。古参と比べればまだ練度は低いが、持ち前の能力もあってそれなりの戦力を身につけた。あとは実戦経験を重ねれば主力の一航戦である赤城と加賀に追い付けるだろう。 「分かりません。ですが、五航戦として恥じない戦果をあげる所存です。不在の一航戦の先輩たちの分まで頑張ります」 赤城は今は第四艦隊の旗艦になり、加賀と共に遠征に行っていた。帰りは明後日になる。この基地には正規空母は赤城、加賀、翔鶴、そしてもう一隻の四隻しかいない。南西諸島海域を攻略中に出会った赤城と加賀は我が軍のトップレベルの強さだ。その二隻を遠征に送り出したのは、その長期遠征が難しいものであること、そして不在により翔鶴の気を引き締めさせて戦闘力の向上を刺激するためだ。正規空母以外にも軽空母や戦艦など、翔鶴よりも錬度の高いものはいるので赤城と加賀の不在にそれほどの不安を抱いていなかった。 「翔鶴一人での出撃ではない。戦慣れしている陸奥も榛名も、北上、不知火もいる。隼鷹もサポートしてくれるさ。それに今回は偵察だ。気負わなくてもいいが、適度な緊張は保っておけ――――――お前には期待しているんだ」 私は翔鶴の肩を叩いた。少しでも翔鶴を励ましたかった。しかし翔鶴の顔に陰りが差し込んだ。 「……期待しているのは、”私だけ”なのでしょうか」 一瞬喉が詰まった。翔鶴は秘書として有能だった。書類の処理も卒なくこなし、雑務も艦隊の世話もキチンとやってくれる。演習を通して戦力もあげていき、遠征でも出撃でも結果を残してきた。決して私情を挟まず私の言う通り、望む通りに行動してきた。しかし今の翔鶴は仕事仲間の枠から抜け出そうとしている。今まで何度かそういう機会があったが翔鶴は自身を抑え込んでいた。だが今は、きっと今ならその殻は破られる。 「提督は、どうして”あの子”を閉じ込めているのですか」 翔鶴は私の目を真っ直ぐに見る。その目に居心地の悪さを感じながらも私は目を逸らすことができない程身体が緊張していた。私の手はタイミングを失って翔鶴の肩に置かれたままだ。 「艦娘は深海棲艦と戦う為に生まれました。それが私たちの存在意義です。中には戦いを望まない者もいます…それでも、私たちはその為にここにいるんです。みんな求められれば戦いに赴きます。勝つために己を鍛えます。それなのに貴方は、あの子をどうして戦いから遠ざけるのですか。装備もすべて外して…出撃はおろか遠征も演習にも出さない。何故ですか」 「それは…」 「私はここに来てからまだ一ヶ月も経過していません。新参者の私に先輩たちも提督も、色々教えてくれました。装備だって強力なものを与えてくださいました… 私より遅れて入ったあの子にも同じことをしていたではありませんか。それをどうして急に止めたのですか、提督」 今まで溜めに溜めていた疑問を翔鶴は私にぶつけていた。翔鶴は私から答えを求めていた。私は、私は。 「……っ――――――」 翔鶴の顔が歪んだ。私が翔鶴の小さな肩を強く握っていたからだ。いや、握るというよりも、服越しからでも中の肉を抉り出さんばかりに爪を立てていた。 「……出撃は十二時三十分だ。他の第一メンバーに伝えろ。さぁ行け」 肩から手を離した。翔鶴は痛んだ肩を手で押さえた。 「……了解、しました」 小さく呟くと翔鶴は私に背を向けて歩き出した。私はその遠くなる背中を最後まで見送らず、何も見えない水平線を見つめていた。 →続き
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深夜の鎮守府の指令室に響くのは粘着質な水音とこぼれる熱っぽい吐息。椅子に座る提督の性器を小さな口をいっぱいに頬張り舌で転がす。 綾波型駆逐艦、漣はその頬を自身の髪と同じくピンクに染めながら一心に奉仕をする。 「んふ…」「…ッ」 喉奥を使い涙で目を潤わせながら射精を促す 「出るぞッ」 どっぷりと放たれた白濁が漣の喉を通る。提督の性器が口から離れるがまだ出し切られなかった精液がつぅっと橋を作る。 「んく…メシマズッ!」「そりゃそうだろう、つかメシマズって…」 数か月前 本土から離れたこの泊地に漣と共に着任し、最低限の資材でやりくり、資材確保に奔走しようやく出撃できたのは着任から5日後。 艦隊と呼ぶには小さいが近海の深海棲艦を初めて倒し、初のMVPを獲得したのは漣だった。 「ご主人様。MVPのご褒美ください」 と修繕を終えた彼女の要求に 「分った。ある程度のモノなら何でも言ってくれ」 と書類整理の片手間で答えた。すると彼女は私の隣に移動し 「ん?今、なんでもって言いましたよね?」 と耳元でささやかれた。私が反応するが早いか机と私の間に入り込みすとんと向かい合う形で私の膝の上に座る。 そしてぽかんとする私の唇にちゅうと唇があてがわれる。それも触れるような可愛らしいモノでなく舌を入れ歯の隙間から此方の口内を貪るような激しいモノだった。 数十秒好き勝手に動いた彼女の舌はぴちゃという水音と共にゆっくりと離れていく 「何を…」「ご主人様…」 うつむき体を震わせ抱きついてくる。思わず抱きしめると少し震えが止まりポツリポツリと語りだした 「この体で初めて出撃して、初めて敵艦を沈めてその時は嬉しかった、です。でもふと前に沈んだ時の事思い出してそれで…次沈むのは私かもって」 何時もの軽い調子でなく小さくなった彼女。 「だから、私、ご主人様に私の全部あげたくってその…」 そう言い終わる前にギュッと抱きしめる腕を強める 「大丈夫だ、私は絶対に誰も沈めたりしない」「ご主人様ぁ…」 彼女は顔を上げる。泣きそうな、しかしそれを抑え込みニィっと笑顔を作る 「女の子に此処までさせたからには答えないとな」「…ハイ」 今度はこちらからゆっくりと唇を重ねる。 まずは唇が触れるくらいに、そして舌を唇の間に滑り込ませ歯列をなぞる。そして舌同士を絡める。 「…ふあ」「ふう、次行くぞ」 コクっと頷くのを確認してセーラー服の中に手を入れる。膨らみかけの胸にある突起を爪で弾くとぴくんと体がはねる。 こんな少女を今からめちゃくちゃにするという背徳感が段々と興奮に変わっていく。 胸を弄る右手もほどほどに左手をスカートの中に突っ込む 「ひゃぁ!」「無理だと思ったらいえよ」 止まるか分らないけどと思いながらパンツの外から幼い裂け目をなぞる。すでに濡れている為ぬるっとした感触と柔らかな肉の弾力が指に絡む 「んん…」 必死に声を抑えようと手で口を押さえているのを見てなおさら声を出させたくなる。パンツをずらし直接指で陰核を刺激する。そして中指を膣内に入れていく 「ああ!」 きつく周囲の肉が指を締め付ける。ゆっくりと動かし解していく 「ご、主人、様ぁ!」 切なげな声が荒い息遣いと共に聞こえる。そして二本目の指を入れていく。くちくちゃという水音を大きくし羞恥心をあおる。 「さて…」「ご、主人様…やっち、まうのね…?」「嫌なら止めるが」「うんん、大丈夫です」 漣の愛液で濡れたズボンのチャックを開けるとギンギンに勃ち上がった陰茎が顔を出す 「グロイですね…」「お前なぁ…」 雰囲気も何もない感想にあきれつつも漣の腰を持ち上げる 「行くぞ」「お願いします」 にち…と粘着質な音と共に陰茎が飲み込まれていく。流石に慣らしたがキツくすぐには入らない。その間に再び右手で胸と左手で陰核を刺激し、啄むようにキスをする。 半分飲み込まれたくらいで緩慢な動きで腰を動かす。段々と深く飲み込まれていく陰茎に比例し柔らかく締め付けられる快感が強くなる。 そして陰茎が全てのみ込まれたところで動きを激しくしていく。 「あっ!ご主人様ッ!コレ気持ち、いい!」「ッ…漣!」 キュウと締め付けが強くなりゴプッと溜められた精液が漣の中に放たれる 「今回も~やられてしまいましたが~」 布団にくるまりニカッと笑う漣に腕枕をしながらあいている手で頭を撫でる。初夜から数か月、体を重ねるのはまだ片手で数えるほどだが段々と慣れたようで 「?どうかしましたか?ご主人様?」「ん?いや初めての時の気弱な漣ちゃんはもう見れないのかなーってな」 そう返すとむっとしたような表情になり 「女の子は弱いところは簡単には見せないんです」 と言い返してきた。もっとも彼女を悲しませるようなことはしないつもりだが 「漣」「なんですか?」「これからもよろしくな」「ハイ!」 「しかし全然育たないですねこの胸」 折角ご主人様が揉んでくれているのにと自身の胸を見て呟く 「揉んだら大きくなるってのは迷信かもな」「いやそんなことは無いですよ」「というと?」 「だって潮っぱいは私が揉んで育てたから」「やってる事エロおやじじゃねえか」
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527 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2014/02/12(水) 11 08 17.82 ID pWbXPwmOこのスレでいろいろ読んでるうちに自分でも書いてみたくなったけど、文才ってどこに課金したら手に入りますか?528 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2014/02/12(水) 11 51 17.48 ID oj2kf4w1 527とりあえず気にせず全力で書いて投稿でいいと思うよ文章のうまい下手よりこんなネタで萌えましたドーンってのでいいんじゃない?文章下手だから偉そうに言えないけど個人的にやるといい作品になるんじゃないかなーと思ってる作業・艦娘の言動や史実から性格や人間関係などを考察(誰にどういう感情抱いて接してるかとか性格や考え方などプロファイリングすると意外と楽しいw)・ついでに提督や舞台背景も考える(テレビCMの登場人物ですら名前や経歴があるらしいw某腹痛薬のCMだと「おなか」さんとねw)・こうすると楽しい!萌える!エロイ!など何を表現したいのか的を絞ってみる。というか妄想する(シチュエーション次第では小ネタでも妄想膨らんで楽しいw)・全文書いた後それぞれの登場人物になった気持ちで何度も読み直す(分かりづらかいとか、こうするとより伝わってせつないかも!みたいなことを結構思いつく)・慣れてきたら「地の文」の表現方法を試行錯誤してみる(官能小説とか地の文だけでおっきするw)529 名前:6-632[sage] 投稿日:2014/02/12(水) 12 47 13.01 ID xQ4WoVrI 527俺は文章力より妄想(想像)力だと思う俺の文はクソでかつ、提督視線なのはその時の提督を降臨と言うか憑依させてその情景を想像し実況する書き方してる逆に言えば一発勝負で推敲も修正もしないだから誤字、脱字はしょっちゅう 実は昨日のヴェールヌイの話は響視点も想像してた だから、最後はああなった 汚い話し、エロシーン書くときは勃起させながら書いてるし シリアスなら泣きながら書いてる 提督やキャラになりきる、ロールプレイの要素が大きいと思う つまり、仕事中に思案してるって事は、仕事中にトリップしてる事を意味し… さて、午後の業務行ってくるでち 547 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2014/02/13(木) 19 28 35.56 ID HP+iBQsh 527SSを書くときは俺はこんな感じ。1.書きたいネタ・シチュをまず用意。(例:比叡と酒盛りやってお互いちょっと酔っ払ったところで色々ぶっちゃけていい雰囲気になりたい!)2.そのネタ・シチュを実現できるお話の大枠を設定する(例:深夜まで秋イベントの資源回復計画の残業・イベントの慰労も兼ねて週末だからと少々強引に誘うとかどうよ)3.登場人物の立ち位置設定(提督:金剛姉妹に頼りっぱなし、でも実は比叡が一番好き 比叡:秘書艦、お姉さまLOVE、でも提督への感情とは別物…このカプは滾る!)4.以上の設定でお話を脳内でスタートさせ、その様子を文章で記録。その際細部の設定も適当に作る(例:飲む酒の種類は?それはどこから手に入れた?その準備をしてる時比叡は何やってる?等々)5.推敲(比叡はこんなこと言わない!(一人称等に注意)や誤字修正等)して投下あと、抜ける濡れ場を書くスキルはまた別物だなぁ…俺は某eraいゲームのお気に入り口上を参考にして書いてるけど548 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2014/02/13(木) 20 42 23.14 ID c5MQbS+tキャラクターのセリフとかは他の人物とかの関係性とかでも結構変わるからなあ何でもかんでも提督とか司令官とか呼ばせりゃいいってもんでもないと思う(階級的に提督じゃないのに提督と呼ぶ人はわんさかいるけど)夫婦間での時間でさえ提督とか呼ばれたらなんだかなあ……って感じだしゲーム中だとキャラごとにプレイヤーをなんて呼ぶかは決まっているのはゲームの都合上の問題だろうけど549 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2014/02/13(木) 20 56 50.80 ID XacPMXP0 548どっかのカップル板のまとめサイトだかでみたんだけどスレ主「高校時代の彼女(後輩)と結婚したけど結婚後もずっと先輩呼びされてる」というのを見て「ああ、なんか良いなそういうの……」って思う俺がいるから人それぞれだと思うよでも、「提督」ってのは役職名だから「先輩」呼びとはちょっと趣が違うかもね551 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2014/02/13(木) 21 48 43.42 ID 2VooPPFm 549職場結婚して家庭内でも課長呼ばわり的な550 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2014/02/13(木) 21 47 36.50 ID Cogl9iaWあれこれ考えるのが苦手という人は頭の中に映像を流してそれを記述するというのも手二次創作みたいに登場人物がどういう人間か説明しなくて良い場合には比較的楽な手法595 :名無しさん@ピンキー:2014/02/18(火) 07 33 57.29 ID zs55Tv3y短編中編はインパクト勝負の所もあるので、絵になるような印象的なシーンとラストシーンの2点を先に思いつけたなら 後はそれに繋がるように設定と流れを考えていくと書き上げやすい、最近の自分の書き方はほぼそんな感じ その場合、開幕は好きに選べるけど終幕と何らかの共通点をもたせると収まり良い感じで個人的に好み なお例のシーンは五感のフル使用を意識すると割と良い感じになる模様 特に味覚と匂いの描写はなかなかの破壊力 596 :名無しさん@ピンキー:2014/02/18(火) 13 00 53.88 ID ZBciYYr2思いついたネタをメモ帳に書き連ねて、 ある程度溜まったらあれとこれを組み合わせたら話としてつながるなあ……ってなって、 最初にまず書き出すと芋づるのようにある程度までどんどんキーボードを叩ける オチが思いついたらそこを目指して書き進める まずは勢いが大事で、書き上げたあとで客観的に読み直して推敲してる 709 :名無しさん@ピンキー:2014/02/25(火) 06 14 52.95 ID wO7gpcVH あと誰視点で書くのかも重要だよな 提督視点、艦娘視点、第三者視点、神(両者の心の声描写付き)の視点、それぞれが混ざるとこんがらがる 最低でも段落ごとに統一したいね ↑の例を借りさせてもらうと、明らかに提督視点で書かれているのにRJちゃんの心の声が混ざると読者が混乱する 気に入ったSSの艦娘視点ver.とかを書くと練習になると思うよ 753 :名無しさん@ピンキー:2014/02/26(水) 10 21 42.85 ID SI/X24Q4 地の文は2、3行で1行空ける 「」は前後を1行空ける 「」の前にキャラ名をつける ←省略可 例 地の文地の文地の文 地の文 地の文地の文地の文地の文 A「」 A「」 B「」 地の文 地の文 地の文
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以下、陵辱&輪姦&NTR要素注意! 繰り返す、陵辱&輪姦&NTR要素注意! 警告に該当する者は直ちに当海域を離脱せよ! ========= 「ぁうっ、うぁぁっ!? あぐっ! うぅぐぅぅっ、あぁああっっ!!」 ウラジオストクの寒い夜。 分厚い塀に隔てられた軍事施設の中で、場違いな日本語の悲鳴が谺する。 「オラオラァ! しっかり腰振らんかァ、賠償艦!」 熊のような体格のソ連将校が、ウォッカの匂いの染みついた巨体を、白く小柄な響の裸体にのし掛からせている。 「ううっ、やっ嫌っ……! ひっひぃっ、あぐぁぁあっっ!?」 無毛の幼い割れ目を、ドス赤黒い露助巨根が裂ける直前まで拡張し、容赦なくゴスゴスと切削していく。 そのたびにぶちゅ、ばぷっと下品な音を立てて漏れ出す黄ばんだ精液の量は、 すでに響の中に濃厚なソビエト産ザーメンが何度も何度もぶちまけられていることを物語っていた。 「しかしガキのくせに処女じゃないとはなー、中古艦寄越すたぁナメやがって、日本人め」 響の頭を無遠慮に掴み上げながら、もうひとりの軍人が唾を吐く。 「まあいいじゃねェか。そのぶん奴らから寝取る楽しみが実感できるってモンだ」 「違いねェ! おいヒビキとかいうの、お前のロリ穴開通式は誰にしてもらったんだ? 日本の弱っちい司令官かぁ?」 その下卑た言葉に、壊れた人形のようにされるがままだった少女の瞳に、理性の灯火が再び灯った。 「し……司令官はっ、私の司令官は……!」 鎮守府で過ごした、あの輝かしい日々。誇り高き戦いの日々。そして心を通じ合わせた最愛の提督。 体をいくら蹂躙されようと、その大切な思い出までは穢させはしないと、青銀の瞳が反抗の光を宿す。 「君たちのようなクズとは、違うっ……私を、大事にしてくれた……愛してくれた、んだ……!」 だが、一拍の沈黙を置いてそれに答えたのは、熊というより豚を思わせる不快な哄笑だった。 「ぎゃはは! なに言ってンだこいつ! ガキが色気づきやがって!」 「いいかァ、その司令官サマが軟弱だからてめーはこうして売られたんだよォッ! おらちょっと黙ってろォ!」 「……むぐぅぅっっ!? うぶぅぅぅっ!!」 頭を掴んでいた将校が、イボつきの凶悪な男根を無遠慮に突き入れて小さな口を塞ぎ、そのまま無理矢理前後する。 「ふんふんフン! おぉっほう、たまらんぜぇ、ほっそい喉マンコがチンポを締め付ける感触はよぉ~!」 「司令官サマの黄色いチンポと比べて俺のはどうよ、ってあぁ答えられねーか、Извините(すまねえな)!」 上下の穴を野太い剛直に貫かれ、体ごと激しく揺すられるストローク、愛情の欠片もない欲望まみれのピストン。 まるで幼い体を赤熱した鉄の杭で串刺しにされているような苦痛と屈辱が、酸欠状態で朦朧とした響の脳を灼いた。 「こいつら艦娘には人権なんざ無ぇからなあ! ましてや、どうぞ好きにして下さいって寄越された賠償艦だ!」 「ブッ壊しちまうまで使い込んで、老朽化で魚雷処分しましたとでも報告しときゃいいからなぁ!」 腐りきったセリフに乗せ、ちっちゃな子宮口をガンガンと手荒くノックし、口までも性器に変えていく、二本の肉凶器。 もはや響は、洋上の嵐のようなその猛威にただ翻弄され、なすすべなく未成熟な体を蹂躙されるがままだ。 「おっおおっっ! ガキマンコがいっちょまえに締めて精液ねだりやがるぜ、出るぞぉぉ、また射精してやるぞぉぉ!」 「んんっっ!? んうぅぅぅーッッ!!? んーうぅぅっっ!!」 おぞましい射精の前兆を、ぷっくりとチンポの形が浮き出すほど犯されたお腹の中で感じ、声にならない悲鳴をあげる響。 だが、か弱く暴れ回る細い腰を、毛むくじゃらのごつい腕ががっちりとホールドし逃がさない。 「こっちもブチまけてやるぜぇぇ! てめぇが誰の艦か、しっかりこってりマーキングしてやらんとなぁぁ!」 青みがかった銀髪をわしゃわしゃと荒々しく掴みながら、喉奥をずぽずぽとえぐるイラマチオもそのスピードを増す。 響にとってなお恐ろしいのは、こうして連日ぶつけられる欲望に、強要される下卑た行為の数々に、 自分の肉体と精神が順応しつつあることだった。心までが、この状況を諦め受け入れつつあることが、何よりも怖かった。 (嫌、嫌だ……! たっ助けてくれ司令官っ、このままじゃ私が……つ、造り替えられてしまうよぉ……!) 「うおぉぉぉっっ! Да(いいぞ)! Да! ソ連軍人様の有り難い精液でしっかり孕めよォォォォ!!」 「конец(イクぞ)! オラ舌出せや! タンパク燃料くれてやるから感謝して浴びろォッ!」 どぶゅるるるっっ……どびゅぶぶぅうっっ!! どぐんっ、びゅくんっっ……ごびゅんっっ! どぐくんっ! ぶばっっっ! びゅちゅっ! どぴっ……ぐびぴっ……びちょおぉ! べちょにちょぉぉっっ……どろぉぉっ……! 「あぶっ、ぶはっ! うっゲホッ……あっ熱っ、うあぁぁあぁあっっ!? いやだっ、もう嫌だぁぁぁぁっっっ!!!」 どぐんどぐんと、好きでもない中年男の大量精液が胎内に押し入ってくる絶望的な感触。 顔や髪にも、ねっとりと黄ばんだ臭い白濁液がほぼゼロ距離で撒き散らされ、二度ととれないような汚臭を染み付ける。 「ふう~、出した出したぁ~。日本産マンコはやっぱ締まりが良いぜ、やるじゃねぇか賠償艦ちゃんよぉ!」 「ぐへっへっ、これからも俺達がみっちり改造してやるからなぁ。チビな体がボテ腹になンのが楽しみだぜぇ」 ごぽぉん……っと、太い剛直が抜き出され、すっかり広がってしまった幼い女性器が、 痛々しく充血した割れ目から、ぷるぷる震えるゼリー状の汚汁を湯気とともに力なく吐き出した。 「あ、あぁぁ……っはぁ、ぁ……うぁ……あ…………」 放心した響をよそに、精液注入を終えた男は床に落ちた軍帽を拾い、体液でどろどろに汚れたペニスをゴシゴシと拭う。 あの懐かしい鎮守府で、司令官がその帽子の上からよく頭を撫でてくれたことを、響はどこかぼんやりと思い出していた。 「おい、お前は今日からヒビキじゃねえ、Верный(ヴェールヌイ)だ。その精液臭ぇ日本の服と軍帽も捨てとけよ」 「ゲハハッ! 確かに肉便器艦としちゃ“信頼できる”性能だからなァ!」 「明日からはケツ穴もみっちり近代化改修してやるからなッ! 覚悟しとけや!」 異国の軍人たちの手で、全身を真っ白に染められた、かつて響と呼ばれた艦。 だがその色は、北の海に降る美しい雪の白ではなく―――。 (暁……雷、電……みんな、すまない……私は、もう、戻れない……みたい、だよ…………しれい、かん…………) ========= 「―――みたいなことになったらどうするんだ!? 俺は絶対にお前をこれ以上改造しないぞォーッ!」 「えっと、そのなんというか……(ドン引き)」 「わざわざ変な紙芝居作られて朗読されても! あとムダに長いし!」 「ひとことで言うと考えすぎだよ司令官。どれだけ想像力が負の方向にたくましいんだ」 「だいたいアンタ、賠償艦のイメージが変に歪んでない?」 「そもそもソ連の皆さんに失礼なのです」 「いやロシア男がイク時にダー!ダー!言うのは本当だって!」 「なにそのどうでもいい豆知識……」 「まあ、安心してくれ司令官。私はヴェールヌイになってもずっとここにいる。離れて行ったりはしないさ」 「う……うぉお……ひ、響ぃーっ!(がばっ)」 「はいはい、よしよし」 今日も 鎮守府は 平和です。
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469 名前:避1-444[sage] 投稿日:2014/08/06(水) 23 59 16 ID M6IL9BjI 大鯨のSSです。注意点は ハプニングはありますが非エロ 龍鳳のSSと話の繋がりはありませんが、キャラ付けや一部来歴等が共通する所があります NGは『幼妻大鯨ちゃん』 です 「不束者ですが、よろしくお願いします」 俺の前に立っていた少女はそう言った。彼女の名は大鯨。艦娘である。 艦娘とは、基本的にはかつて実在した艦船の力をその身に宿した少女の総称であり、 大鯨と名乗った彼女も潜水母艦大鯨の力をその身に宿している。 大鯨という名も彼女が大鯨の力を宿し、行使できる存在であることから名乗っているのであり、彼女の本当の名前を俺は知らない。 彼女に限らず大半の艦娘は本当の名前を封印し、その身に宿した艦船の名を名乗っている。 ちなみに艦船の中には人名のような名称のものも存在するが、そのような艦船の力を持つ艦娘は本当の名前、もしくは名字が一緒ということがあるらしい。 名もなき孤児だったが艦娘として幼い頃から育てられた故にそれこそが自身の本当の名前である艦娘もいるらしく、 中には艦娘が大切にしている、あるいはしていた存在の名前と、力を行使できる艦船の名前が偶然一緒だったということもあるとか。 とりあえず彼女に関しては純粋に力を行使できる艦船の名前を名乗っているだけと思う。 「よろしくな、大鯨。早速だが君の練度を上げる為に演習をするから君には第一艦隊旗艦になってもらう。 戦闘目的の艦でないとはいえ、ある程度は強くならないといけないからな」 「第一艦隊旗艦……それは私が秘書艦になれということでしょうか」 「ああ、他の艦隊は遠征に出かけているからな。なに、心配しなくていい。秘書艦の仕事といっても君はまだこの部隊に来たばかりだ。 君は私の仕事を見ながら、部隊のみんなと打ち解けていけばいい」 「はい、わかりました」 いつもだったら演習以外で秘書艦に新人をつけておくことはほとんどない。 俺が新人の彼女を秘書艦にしたのも彼女と一緒にいたいからだ。彼女に一目惚れしてしまった以上仕方ないことだ。 一応公私混同と言われた時の為の大義名分もあるにはある。 潜水母艦大鯨は戦闘目的で作られた艦ではない。空母にされる目的で作られ、実際空母龍鳳に改造されたこともあった。 しかし彼女の場合設計図が必要らしく、勲章とは無縁な俺には関係のない話だった。 だから彼女にデスクワーク等を教える名目でずっと一緒にいてもそう不自然ではないだろう。 こうして、俺の新たな仕事が始まった。 大鯨が来てから一週間が過ぎた日の夕方、全ての仕事を終えたばかりの俺は机に突っ伏していた。 「あぁ………腹減った…………」 突っ伏していたのは腹が減ったからというだけではない。 というのも俺は大鯨に一目惚れしたとか言ったが、実際は生で見る…いや、写真で見る前に艦娘達が描いた似顔絵で見ていたが、 その時には何も感じなかった。なので実は一目惚れとは言えないんじゃないかと悩んでいた。 くだらん事と思われそうだが俺は時々だが普段は気にしないような事を気にする。 勿論仕事には支障がないよう最大限努力したが仕事を終えた途端緊張の糸が切れたからかどっと色んなものが押し寄せてきた。 俺はそれらから逃れるかのようにまどろみの中に落ちていった………… 「ん……時雨か………」 物音がして眠気が吹っ飛んだ俺は起き上がった視界に入ってきた少女に声をかけた。 「提督…しっかりしてください!いくら私が時雨と似ているからって間違えちゃうなんて……」 そこには時雨ではなく、遠征に出していた大鯨がいた。 「私がいない間に提督に沢山の仕事が入ったって聞いて、帰ってきてすぐに飛んで来ましたけど……」 心配そうな顔でこちらを見る大鯨。仕事が忙しかったとはいえさすがに何も食べなかったのはまずかったか。心配かけすぎたようだ。 「すまないが冷凍庫のうどんをポットのお湯で解凍して、戸棚にあるレトルトの親子丼をかけてレンジでチンしてくれ」 「ええっ!?それじゃあまり…」 「早く…」 「わ、わかりました。それじゃすぐ」 そう言って大鯨は言われた通りにした。途中で訝しがるような表情をした気がしたが、腹が減っていたから気に留めなかった。 「あー、食った食った」 「元気になられて何よりです……」 空腹のせいで調子悪かったが、満腹になったから元気になった。 しかし今度は大鯨がなんだか元気なさそうである。 「ん?どうかしたか?」 「提督……レトルトの賞味期限、少し切れていましたよ……」 「ああ、すまない。忘れていたよ。まあ美味しく食べられる期限だから少しくらいは過ぎていても…」 「あと冷凍した生うどん、消費期限が過ぎてますし」 「冷凍してあるから少しくらいなら大丈夫さ」 「……そうですか…………」 大鯨は諦めたかのようにそれ以上は何も言わなかった。だが少し不安そうにしている表情は俺が司令室を出るまでそのままだった。 大鯨が来てからちょうど一ヶ月が過ぎた。俺は普段行かない食堂に珍しく足を運んでいた。 「提督!?いつも食堂に来られていなかったのにどうして今日は……?!」 「え…ああ、そうか。君は今週は遠征していて食堂に来れなかったんだったな。実は今週七夕フェアをやってるから久々に来ているんだ。 あと今日はハヤシライスが出るからな。小学生の頃に体験学習で行った先の一日目の昼食で出るはずが 台風の影響でそこに行ったのが午後からになってハヤシライスを食べ損ねたんだ。 それ以来、学食とか食堂でハヤシライスが出る日は必ずハヤシライスを頼むようにしたんだ。 これはあの時以来変わらない癖みたいなものだな」 「駄目ですよ…食堂で出るお食事は栄養バランスがいいんですからちゃんと食堂で食べるようにしないと…」 「ハヤシライスだけじゃないぞ。トルコライスや鳥の唐揚げのマヨネーズがけ丼の時だって食堂に顔を出すし。 あと親の知り合いが俺がラーメン好きと知って毎年ラーメン送ってくれるくらい俺は麺類好きだから麺類フェアの時は欠かさず顔を出すし、 食べたことが無いような珍しい料理が出た時も…」 「…提督は普段どんなお食事をなされているのですか……?」 「ああ、普段はグッズがもらえるキャンペーンやってるコンビニのパン買ったり、 スーパーのお惣菜コーナーで夜に半額の商品を買ったり、安売りのカップ麺を買ったり…」 「…提督、もう少しお体を労ってください」 「大丈夫だ、トクホの商品を買って…」 「ダメです!!」 大鯨が怒鳴る。 「……ごめんなさい、大声をあげて。でも…このままだと本当にお体にさわりますよ」 大鯨の目に薄らと涙が浮かぶ。 「……わかったよ。これからは気をつけるよ……」 「本当ですか……」 「本当だって…」 渋々納得したような感じだがまだ疑うような目をしていた。 これからはお惣菜やカップ麺を控えてちゃんとお弁当を買ったり、 なるべく食堂で食べるようにしようと誓った。 あくる日の朝、俺は葱を切っている音で目が覚めた。味噌汁の匂いがして久々に…… ってちょっと待て!俺は鎮守府近くの宿舎で一人暮らしの筈だぞ! 「誰だ!」 俺は起き上がって身構えながら声をあげた。 「あ、提督、おはようございます」 そこにいたのは大鯨だった。俺は相手が顔見知りな部下だった事に安堵したが、 同時に何故彼女がここにいるのかと思い問いただした。 「提督、昨日の事を覚えてらっしゃらないんですか?今日の七夕祭の為の会議に参加して、飲んでいたことを」 鎮守府は基本的に深海棲艦と戦う為の基地であるが、同時に深海棲艦の被害者達への慰問等も行っている。七夕祭もその一つだ。 「確か会議が終わった後飲み会に誘われて……酒は強くないから飲んだのは最小限で済ませたけど、 体が微妙にフラついて、大鯨に頼んで一緒に俺の宿舎に帰ってきたんだったな」 「覚えてらっしゃったんですね」 「酔い潰れるまで飲んだわけじゃないからな。しかしお前は自分の宿舎に帰らなかったのか?」 「少し気になったので提督の部屋の冷蔵庫を見たりしましたけど……あれじゃ本当に健康に悪いですよ。 野菜とかほとんどありませんし、戸棚もレトルト食品ばかりで、今作ったお味噌汁も期限が迫っていて…」 「ああ、すまなかったな、ありがとう」 「とりあえずそのままだとあれなので冷蔵庫にあった葱をきざんで入れましたよ」 「すまぬ…」 「はぁ……本当に心配になってきました………」 心配そうにする大鯨を見て心が痛んだ。俺はそれから逃げるかのように味噌汁をズズっと啜った。 「ん?これ、生姜が入っているか?」 「よくわかりましたね。あまり入れませんでしたけど…」 ほのかな生姜の味がなんだか活力を与えてくれるようだった。 ちなみに葱や生姜は元々俺が買っていたもので、素麺等に使う為だ。 「インスタントの味噌汁でさえこんなに美味しく作れるなんて、大鯨は将来きっと…料理で人を幸せに出来るだろうな」 いいお嫁さんになれそう、と言いかけ、なんとか別の言葉で言う。 「そんな…幸せにできるだなんて…」 「自信持ってもいい。俺は今生き生きとしてきたぞ」 俺の言葉に大鯨は恥ずかしそうに顔を逸らした。 そういえば誰かと朝ごはんを食べるなんていつぶりだろうか。 無論出張した時とか、朝まで会議していた時には誰かと一緒に食べたことがあるが、 こうして自分の空間で誰かと食事したことは鎮守府に来てからは記憶にない。 ふと俺は時計を見た。よかった、まだ結構時間がある。俺は大鯨に注意をされないように普段はあまりしない身支度を自分からやった。 昼過ぎ、俺が七夕フェア最終日のメニューを食べ終えた頃、食堂内に大きな笹の葉が入ってきた。 立て掛けられるや否や次々と群がる子供達。食堂はお昼時には一般開放されているのが、学生である彼等がここにいるのは社会見学を兼ねている為である。 「ほらほら、お前ら一気に群がるんじゃない。順番順番」 今日の俺の秘書艦の天龍が社会見学に来た子供達に言う。 いつもの秘書艦の大鯨はちょっとした用事があると言って秘書艦の仕事を天龍に代わってもらっていた。 「ふふっ、天龍さんったら、口は少し乱暴そうですけどみんなをちゃんと思いやって見ていますね。きっと将来いい先生になれそうですね」 そう言いながら大鯨が戻ってきた。そして天龍に謝るような口調で 「すみません秘書艦なのに仕事を天龍さんに押し付けてしまって…」 と謝った。 「気にすんなって。元々俺が子供達の引率担当だったからな。ちょっと手間が増えただけだ。それよりもお前らも願い事を書いていけよ」 気にするなと言うような感じで短冊とペンを俺達に手渡し、天龍は子供達を連れて行った。 天龍達を見送った俺達は短冊に願いを書き、笹の葉に飾り付けた。 「大鯨はどんな願いかな……『私の願いが叶いますように』……これまた随分とスーパーアバウトだなあ……」 「提督は……『この世から不幸がなくなりますように』…ですか」 「幸せを望むよりも不幸を望まない方がいいかなって思ってさ。ちょいと消極的過ぎかな?」 「いえ、この世から不幸な事や悲しいことが消えればいいって私も思っています」 「あ、提督!それに大鯨さん!一緒にいたんですね、調度よかった」 鎮守府の連絡係兼事務長の大淀が書状を持ってやって来た。 「大鯨さんよかったですね。提督もこれを見てください」 大淀が見せた書状には、大鯨が俺の所へ住み込んでお世話することを許可する、という旨の内容が書いてあった。 どうやら大鯨が午前中いなかったのは不摂生な俺の世話をする為だったらしい。 なんだかやけにあっさりと許可が下りたなと思われるだろうが、こういったことはそんなに珍しい話でもない。 宿舎は部屋こそどれも広いが原則的に一人部屋であり、複数人での入居が許される範囲は家族くらいであり、 他人、ましてや異性と同居するなどありえないだろう。 しかし例外もあり、艦娘側が詳しく事情説明をすれば艦隊司令官以上の者の警護も兼ねて男性艦隊司令官との同居が許される。 ちなみに男性司令官から警護が欲しいと言われれば男性憲兵が警護に来て、 女性司令官から言われた場合は艦娘が警護につき、艦娘側から女性司令官警護を申し出ても簡単に警護出来るらしい。 大鯨があっさりと許可を貰えたのは俺があまりにも不摂生だということがみんなに知れ渡り過ぎているからなんだろう。 鎮守府の最高責任者にまで『もう少し摂生しよう』と言われたくらいだからなあ。 まあわざわざ言ってくれたという事は俺の事を必要と思っているからであろう。 俺は階級こそあまり高くないが、かつて……去年のクリスマス頃に現れた謎の敵― ―深海棲艦とは違い、艦娘と同じくかつての艦船の力を持った存在、 しかし力を発現できる存在ではなく艦船そのものがパワーアップして現れた存在― ―それらに対し一番有効な対策を立て、どうにか撃破することが出来た事が評価されているからか、 鎮守府における俺の重要性は結構高かった。 「まあ理屈は通っているけど、わざわざそこまで…」 「提督が倒れたら少なからず皆さんの心に影響がありますし、なによりも私…」 「わかった、俺を護ってくれ」 「…………はい!」 何拍か置いて、大鯨は嬉しそうに返事をした。 こうして、俺達は一つの部屋で一緒に暮らすようになった。 それからというもの、俺は凄く幸せだった。一人暮らしだった時と比べたら自由な時間は減り、同居人である大鯨にも気を遣ったりしたが、 それは大鯨も同じ、いや、無理を言って押しかけたからこそ俺以上に気を遣っているだろうと考えたら文句なんて言えない。 下手な事を言って彼女に嫌われたら、例え世話だけはしてくれたとしてもかなり気まずい。 それに、少々俗な言い方になるが、まるで幼妻と言いたくなるようなセーラー服を着たかわいい女の子が一緒に住んでくれて、 自分の為に手料理を作ってくれるという状況は男なら誰でも憧れるだろう。 それが自分が好きな女の子なら尚更だろう。もしその行為が仮に女の子に恋愛感情がない場合での関係だったとしても。 大鯨と一緒に暮らすようになって数ヶ月。秋の健康診断の結果は前の健康診断の時よりも良くなっていた。 これも大鯨の手料理のお陰だろう。なんだか嬉しくなった俺は、仕事が終わったらどこにも寄らずに帰っていった。 大鯨と一緒だったなら結果が出てすぐに大鯨に見せ、帰りも買い物をしていっただろうが今日は大鯨は休養日である。 「ただいまー!」 俺は嬉しそうに部屋に入っていった。しかし大鯨の声が聞こえない。 いる時はいつもすぐに返事をするのに珍しいと思い、買い物かなと思ったが、ふと浴室からシャワー音が聞こえた。 なんだ、風呂掃除をしていたのか。俺が一緒にいる時はいつも俺が掃除していたが、 俺がいない時は大鯨が風呂掃除をするというのが誰が言い出すでもなく決まっていた。 「大鯨、ただい………!?」 バスルームの戸を開けた俺の目の前に凄い光景が広がっていた。 大鯨がシャワーを浴びていたのである。勿論服なんて何も着ていない。 形の良さそうな、安産型みたいな大きいお尻に一瞬釘付けになったが、すぐに視線を上に逸らした。 大鯨の横髪は濡れているにもかかわらずいつものようにまるで鯨のヒレを表しているかのごとくハネていた。 大鯨が気配に気付いたのか顔をこちらに向けた。 数瞬の沈黙の後、声をあげたのは俺だった。 「ご、ごめん!」 俺は全力で謝り、その場からすぐに離れた。 「本当にごめん、大鯨……」 「いいえ、悪いのは私の方です。掃除に疲れたからって、提督がお帰りになる前に勝手にお風呂に入ろうとした私の方が……」 こういう時はたとえ男に落ち度がなくても責められるものだが、大鯨はひたすら自分に非があると謝り続けた。 そんな彼女を見るのが辛かった俺はすぐに健康診断の結果を見せた。 この前の時と比べて凄く良くなって、これも大鯨が来てくれたお陰だとひたすら大鯨がいてよかったと讃えた。 その甲斐があったのか、大鯨はやっと落ち着いた。 その夜、俺はふと目が覚めた。色々あって疲れているはずだから眠りも深くなるはずなのに目が覚めるのは珍しい。 しばらくして俺は横に僅かな温もりを感じた。そして豆電球の明かりに照らされたものを見て俺は声をあげそうになった。 なんと大鯨が俺の隣で寝ていたのだ。 ひょっとしてマズい事をしてしまったのかと思い、布団をあげた。 非常時の為に置いておいた懐中電灯で照らして見た感じ特に変な様子はない。 俺のパジャマにも、大鯨のパジャマにも乱れた様子はなく、布団も汚れているわけではない。 俺は時計を見て何もなかったという事を確信した。俺が寝る前に最後に確認した時間からそれほど経っていなかったからだ。 俺は大鯨が何故俺の布団に入ってきたのかを考えたが、寒くなったからとか、間違えたとか、そういった事と思えなかった。 しかし考えていても仕方がない。俺は大鯨がいつも寝ている畳部屋に彼女を運んだ。布団は敷いてあったから彼女を寝かせた。 さて、これからどうするか。あんな事があって目が覚めてしまい、寝ようとしても悶々とした気持ちになってしまうだろうからと、仕事に取り掛かった。 仕事といっても軍務関係ではなくイベント関係だった。今度のイベントはハロウィンである。 ハロウィンまではまだ日程はあったが、この機会に草案くらいは作っておこうかと思った。 色々調べ事をしたり考えていて、気が付いたら朝になっていた。我ながらよくもまあここまで作業が出来たものだ。 時計を見るといつもは大鯨がもう既に起きて朝食ね準備が出来ている時間だが起きている気配さえない。俺は大鯨を起こしに行った。 大鯨はまだ眠っていた。よく見ると枕が涙で濡れているように感じる。とりあえず俺は大鯨を起こそうと声をかけた。 「大鯨、起きて!」 「…………」 「大鯨、もう六時半だよ!」 「ん……あ…………ええっ!?もうこんな時間!?」 大鯨はひどく慌てた様子で起き上がった。目を見ると泣き腫らしていたのか少し赤くなっていた。 「提督、ごめんなさい、寝過ごしてこんな時間に……」 「いや、気にしなくていい。今日は俺も休みだからな」 俺が夜更かししてハロウィンプランを練っていたのはそのためである。 「今日はゆっくり休もう。働いてばかりでも駄目だからな。とりあえず起こしてしまってごめんな」 俺はそう言って大鯨を再び寝かせた。俺は昨日の夜からずっと目が冴えているからまだしばらくは眠れそうにないだろう。 その間に俺は考えた。何故大鯨は泣いていたのだろうか。色々と思い返したところ昨日のシャワーシーンが思い当たった。 確証はないが、多分裸を見られてしまってもうお嫁に行けないと思ったのかもしれない。 だとすれば、俺は男として責任を取らなければならない。 俺は大鯨が目を覚ますまで、彼女が目を覚ました時に何と言うべきか考えた。 「提督、さっきはごめんなさ………何ですか、そんなかしこまって?」 大鯨…いや、一人の少女が驚いていた。 「君に大事な話があるんだ。昨日俺が君の裸を見てしまっただろう。 だから君がもうお嫁に行けないって思ってしまったんじゃないかと思ってね。 俺はそうなってしまった責任を取りたいんだ… いや、それも単なるきっかけに過ぎないかもしれない。 俺は君を一目見たときから好きになっていたんだ。そして、君との日々を過ごす内に君の優しさや思いやる心に触れてますます好きになっていったんだ。 そして君が一緒に住んでくれる事になった時は本当に嬉しかったんだ。君と過ごす幸せな日々…… それはとてもかけがえのないものだったんだ。そしてこれからもそんな日々を過ごして行きたい。だから…俺と結婚してくれ!」 俺の一世一代の告白である。失敗するならその時はその時である。 しかし、彼女の言葉は俺の言葉への答えではなかった。 「……どうして……どうして私に何もしなかったのですか……………」 「え……」 「若い男女が一緒に暮らしていたなら何かあってもおかしくはないでしょう。 でも、あなたは私に何もしなかった……私が布団に潜り込んだ時だって……」 昨日俺の布団に彼女が潜り込んだ理由はそれだったのか。 「私は枕を濡らし、もうこの恋が実らないものと思っていました。優しく想ってくれていたのは私の勘違いなのかなって……」 「それは違う!俺は下手なことをして君を傷付け、嫌われてしまう事を恐れていた。 だけど、それこそが間違いだったなんて…… 俺だって男だから色々と思う事だってあった。だけど、君と過ごす何気ない日々…… テレビを見ながら笑い合うとか、一緒に音楽を聴くとか……そんな何気ないことでも、君と一緒というだけで幸せだったんだよ」 「…………ううっ……私はなんて馬鹿だったんでしょう……あなたの気持ちを理解できなくて……」 「だったら教えてくれ。俺の言葉への答えを」 「あなたの言葉への答えは……私もあなたと一緒にいたい。私を選んでくれてありがとうございます……」 涙を流しながらだったが。徐々に笑顔になり、嬉し涙に変わっていく。そして、彼女はある言葉で俺の気持ちに応えた。 俺達が初めて出会った時に言った言葉、だが、その時とは少し意味が違う言葉で。 「不束者ですが、よろしくお願いします」 ―終― これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
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14 :名無しさん@ピンキー:2014/04/17(木) 01 33 55.94 ID Di4v7A7c お風呂騒動 伊58「てーとくー、何でてーとくは少佐なのに提督って呼ばれてるんでち?」 それはゴーヤのそんな些細な一言から始まった。 提督「ゴーヤか、どうしたんだ?突然」 いつの間にか背後に回り、抱きつかれる。 潜水艦だけあってか気配を消すのがうまいようで 何処からか突然現れ、よくこうして抱きつかれている。 始めのころは、柔らかい二つのふくらみを押し付けられて あたふたとしたものだった。 最初はイクだけだったのだが、いつの間にかゴーヤたちも真似するようになっていた。 伊58「他の提督さんはみんな少将以上なのに不思議ねって 他の艦娘が話してるのを聞いたでち。なんででちか?」 提督「ふむ」 ゴーヤの言う通り、提督と呼ばれる者は少将以上が通常だった。 深海棲艦が現れるまでは。 伊19「イクも気になるの!」 ひょこっと何処にいたのかイクも抱きついてくる。 潜水艦は気配を消すと心も読めないので時折びっくりさせられ、心臓に悪い。 むにゅっとボリュームのあるふくらみにゴーヤが少し押され気味になった。 伊58「わわ、イクちゃんに押し出されちゃうでち」 伊19「いひひ、それそれ~なの!」 むにむにと頭の上で乳相撲を始めるのは色々と困りものだ。 何処の提督がこの水着を指定したのだろうか。 まったくけしから・・いい趣味をしている。 伊401「なになに?ないしょのお話?しおいも気になっちゃうな~」 伊8「あ、それなら・・・はちが知っていますよ」 にゅっと提督の足の間から二人が顔を出す。 提督「しおい、はち、何処から顔を出しているんだ・・・」 伊168「すみません司令官。目を離したすきにいなくなっちゃって・・・」 そういって遠征帰りのイムヤはしおいとはちを摘み上げる。 伊401「やだやだやだ!提督のおひざがいいよ~」 ジタバタと提督の足にしがみついて離れなかった。 伊8「あ、それでははちは提督の右腕にしますね。」 大人しくイムヤにつかまったはずのはちが、いつの間にか右腕にしがみついていた。 イクに負けず劣らずの胸に腕を挟まれ、どうしたものかと思案する。 伊168「あっ、こら!もう・・・それじゃあ司令官の左腕はイムヤにお任せ!」 提督「う、動けん・・・」 心地よい刺激は魅力的だが、このままでは任務が遂行できそうにない。 どうしたものかと思案すること数瞬、先ほどはちは知っていると言っていたな。 15 :名無しさん@ピンキー:2014/04/17(木) 01 34 27.61 ID Di4v7A7c 提督「はち、代わりに説明してくれるか?」 伊8「んぁはっ、きゅ、急に動かれると、びっくりしちゃうんだよねぇ・・・」 そういえば大きな音などが苦手というのを話していたのを思い出した。 しかし今回のは少し違う。 伊8「(提督の腕が胸に擦れて・・・先っぽが///)」 と心の声が聞こえてきた。 提督「はち、すまない」 ゆっくりはちの頭に手を持っていくとビクッと身構えたはちだったが、 「大丈夫だ」というこちらの目線に気付いたのか、ふっと力を抜いた。 伊8「ダンケ、提督の手は落ち着きます。」 伊19・伊58・伊401「あー!はっちゃんだけご褒美ずるい(の/でち)!」 一斉に他の艦娘から抗議の声が上がる。 提督「いや、これはご褒美では・・」 そう言いかけて目を輝かせる艦娘たちに、負けた。 伊19「んふー、提督の手はおっきくて気持ちいいなのねー」 伊401「んー、きもちいー。提督撫でるの上手ですね!」 伊58「あっ、二人も先にずるいでち!」 何処となくゴーヤが寂しそうだったのでわしゃわしゃと撫でてあげる。 伊58「や、やめるでち!なんでゴーヤだけ乱暴なのぉ?」 伊58「(てーとくはゴーヤのことが嫌いなのかなぁ・・・)」 ものすごく切ない感情が流れ込み、慌てて優しくなで掬う。 この力をもってしても、未だに乙女心というものはよくわからない・・・。 伊58「あ、ほんとに心地いいでち・・・///」 ほわぁ~と夢見心地に、くてっとしな垂れかかってきた。 他の艦娘も皆恍惚としてしまっていることから、何か手のひらに 術でも施されているのではないかと本気で調べてみたが、 特に変わったところはなかった。 非常に謎だ。 伊168「あ、その・・・えっと」 ふと見上げると一人残ったイムヤがもじもじとしていた。 伊168「あ、あんまり痛くはしないでね?」 ギュッと目を瞑って祈りのポーズのようなイムヤに思わず噴き出した。 提督「ははっ、何か別のことに聞こえるな」 伊168「え?どういう・・・あっ・・・///」 撫ではじめると普段割とサバサバした性格のイムヤは 急にしおらしくなった。 伊168「これ・・・いいかも♥」 ふにゃふにゃとイムヤも床にぺたんと座り込んでしまい、 全ての潜水艦の撃沈(?)に成功した。 16 :名無しさん@ピンキー:2014/04/17(木) 01 35 21.59 ID Di4v7A7c 伊168「・・・そ、そういえばまるゆは?」 伊58「さっき木曾とカレー作ってるのを見かけたでち」 偶然か心を透かされたか、まるゆの話をしているのが聞こえた。 まるゆ・・・。 存在をすっかり忘れていたのを心の奥で詫びる。 そういえばこの鎮守府に左遷・・・いや、着任してから最初に懐かれたのも潜水艦だった。 潜水艦が着任するたびに次々に懐かれ、今では無音で気配もなく飛びつかれて、 気づくと潜水艦まみれになることもしばしばである。 伊8「・・・というわけで、提督は少佐にもかかわらず「提督」とか「司令官」って 呼ばれているわけです」 えっへんと胸を張るはちは普段は本に隠れて目立たないその大きなふくらみを より一層目立たせて潜水艦たちの視線を集めていた。 潜水艦ズ「ゴクリ・・・」 伊168「と、とっても大きくて(?)わかりやすかったわ!」 伊401「なぁんだ~、提督は術者だし何か特別なのかなって思ったのになぁ、ざーんねん」 伊19「艦娘を指揮する任務に着任した人はみんな司令官で提督なのね?」 伊58「みんなに教えてくるでち!」 そう、例え階級が下がろうとも一度艦娘と結んだ信頼はそう簡単に断ち切れない。 提督が死亡しようとも、任務放棄して行方知れずとなろうとも、だ。 提督が一定期間着任しないとその鎮守府の艦娘は凍結され、 一定期間が過ぎると解体される。それは提督の死亡認定と同義だった。 17 :名無しさん@ピンキー:2014/04/17(木) 01 36 06.72 ID Di4v7A7c 提督「ふぅ、いい湯だな・・・」 鎮守府には艦娘用と提督用の風呂がある。 本来は艦娘の入渠のための風呂しかないのだが、 提督執務室に特別に拵えさせたのだ。 普段は気づかれない布団の下の床に・・・。 伊19「ほんとに、いい湯なのね~」 いつの間にかイクが横にいた。 提督「イク、いつの間・・に・・・・?、ぐっ」 なんだ・・・? 体が痺れて思うように動かない。 伊19「いっひひ!今日こそは追い詰めたのね!お礼は倍返しって言ってたのね!」 目をハート型にしながらイクが嬉しそうにこちらを見ていた。 迂闊だった。 先ほど飲んだ紅茶に一服盛られていたらしい。 今まで幾度となくモーションをかけられては迫られていたが よもやここまでの強行にでるとは・・。 伊19「さぁ~て、たっぷり可愛がってあげるの!」 ボディソープをたっぷりと水着の上からたっぷりと塗りたくり、 妖艶な笑みを浮かべながら迫ってくる。 提督「く・・・」 ぬりゅにゅり 伊19「んっふふ♪どう・・・なの?んっ♥きもち・・いい・・んんっ♥・・の?」 対面座位のような格好になってイクはしがみついて離さない。 ヌメヌメとした水着の感触と、二つの柔らかい弾力のある小山、 その先端の固くなった突起の感触にムクムクと劣情が鎌首をもたげる。 提督「イク・・・何を飲ませた・・ッ・・!」 伊19「いひひっ、ちょ~っと、ゾウさんも一撃必殺なお薬を飲ませたのぉ!」 一撃必殺・・・殺す気か・・・。 本来毒の類の効かない血筋だが、この薬はやばい。 解毒用の呼吸法でも薬の分解に追いつかない。 伊19「あー!また逃げるつもりなの?今度は逃がさないの!」 そういうと水着を少しずらし、狙いを定めていた。 何をしようとしているのか察したが、時すでに遅し。 伊19「えいっ♥」 ずぶぅっ あまりに勢いがありすぎて一気に一番奥まで突き刺さってしまった。 伊19「痛っ・・うぅぅぅぅぅ・・・痛い・・・のね・・・」 前戯もせずの挿入だったが、すでに膣中はとろとろになっていた。 それでも破瓜のあまりの痛みにイクはしがみついて涙を浮かべている。 18 :名無しさん@ピンキー:2014/04/17(木) 01 36 38.50 ID Di4v7A7c 提督「イク・・」 精一杯の気力を振り絞ってイクを撫でる。 破瓜の痛みと先ほどの快楽でイクも動けないようだった。 伊19「あ・・♥てーとく♥、提督はやさしいから好き・・なのね」 痛みに涙をため、快楽に蕩けきった顔で指を這わしてくる。 イクの瑞々しいぷっくりとした唇がゆっくりと近づいて、 そのやさしい口づけを無言で受け入れた。 伊19「んっ・・・ん・・・♥」 痛みによるものではない涙がぽろぽろと湯船に落ちる。 伊19「やっと・・・受け入れてくれた・・・のね」 にひひ、と笑うと抽挿を始めた。 提督「イク、無理はするな」 伊19「無理じゃ・・んっ♥ない・・・のね!ふぁっ♥」 ズンズンと激しく動くイクの声音には艶がのっていて 言っていることは嘘でないことがわかる。 先ほどからきゅうきゅうと締め付けられていたためこちらはすでに限界は近い。 一気に反撃に出る。 我、反撃ニ突入ス 提督「イク、いくぞ」 ズンズンズン 麻痺のとれた腰を激しくイクに打ち付ける。 伊19「あーっ♥んやぁ~っ♥はげしっ♥すぎるのね~♥」 伊19「こんなんで・・あっ♥・・イクを追い込んだつもりなの…?逆に燃えるのね!」 お互いに獣のように激しく求め合ううちに、限界が来るのはそう長くはなかった。 伊19「あっ♥あっ♥あっ♥もうっ・・イク、イクの~♥」 提督「イク、俺も愛している。」 気恥ずかしさから返事を許さずイクの唇を奪う。 伊19「!?ンンッ~~~~♥♥♥」 イクはビクビクと大きく痙攣してギュッとしがみついて果てた。 19 :名無しさん@ピンキー:2014/04/17(木) 01 39 05.70 ID Di4v7A7c 伊19「のぼせたのね~」 イクがのぼせている間に、破瓜の血の混じった湯を捨て もう一度湯を張りなおした。 提督「無茶をするからだぞ・・あまり心配させるな」 あの後ぐったりしてしまったイクを慌てて介抱して今に至る。 唸り続けるイクを団扇で仰ぎ続けたが、もうだいぶいいようだった。 伊19「んふー、提督は何をしても怒らないから好きなのね」 イクを仰ぐのをやめ頭を撫でていると気持ちよさそうにそんなことを言ってきた。 提督「いつも驚かされてばかりだな」 伊58「それー!でち!」 提督「うお、ご、ゴーヤ!?何処から・・・」 伊58「提督の湯船からこんにちは!ゴーヤだよ!って、イクちゃんだけずるいでち! ゴーヤも提督と愛し合うでち!」 伊401「あー!次はしおいの番ってさっき決めたでしょ!? ね、ね、提督!しおいとしよ?ね?いいよね?・・・ね?」 伊8「あんっ♥はっちゃんヤっちゃった?・・・んくっ♥」 いきなり挿入してきた初めてと思われるはちが、痛みに耐えて口づけをしてきた。 提督「く・・・いつの間にはちまで・・」 伊168「ず、ずるい!私も司令官に愛されたいのに!」 伊19「くぅっ、提督は渡さないのね!」 伊401「あーん、しおいも!ね!いいでしょ?ね?」 伊58「ゴーヤも忘れないでくだちい!」 こうしていつものごとく、鎮守府の夜は更けてゆく。 まるゆ「隊長に美味しいって言ってもらえるかなぁ?」 木曾「何を言ってるんだ。木曾カレーにかかれば提督なんていちころだ。」 前に褒めてもらったしな。と木曾は照れ笑いをしつつ付け加えた。 まるゆ「まっててね!隊長!」 その日、カレーを持って行ったまるゆはお風呂騒動に巻き込まれ カレーと一緒に美味しくいただかれたのだった。 これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
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艦娘はいい。 特に空母は最高だ。 あの飛行甲板の雄々しき姿、そして艦上機を次々に送り出す様はまさに爽快だ。 艦隊戦であっても飛行機の力が必要になる。 初めて空母を艦隊に配置したときの飛行機による爆撃、雷撃の破壊力には心震えた。 空母は戦の要だ。 し・か・も! 皆真面目でおしとやかで要領いい娘だ。 彼女らと出会えたことを僕は神に感謝したい。 そう。 真面目で。 「提督ぅ~ごめーん寝坊しちゃった。皆もう出撃(で)ちゃった?」 おしとやかで。 「うう、二日酔いしちゃった。うううっ、バケツバケツ…」 要領のいい。 「結構でちゃった。バケツ五個!新記録だぜ。」 彼女らに出会えたことを僕は神に感謝したい。 「おいおい照れるぜぇ~」 「お前をのぞいてなあ!」 そんな比較的いい娘が多い空母の中にも一人、例外がいる。 隼鷹だ。 「あのさあ…僕言わなかったっけ?06;00時をもって沖ノ島へ進出するって…。」 「あー。」 「あー。じゃないよ。我が鎮守府始まって以来の大戦だよ?他の皆もう出撃しちゃったよ?」 「飛鷹も?」 「うん。」 「今何時?」 「06:30」 「間に合うかな?」 「低速艦じゃむり。」 「しゃーねーな。提督、酒に付き合ってよ。階級中佐だっけ?いい酒あるでしょ?」 なにいってんのこいつ。反省する気ゼロじゃん。てかまだ飲むの? 「残念だが海軍学校出たての貧乏提督なんでね。そうゆう類、買う余裕なんかありません。指令室がいまだにぼろ和室なのもそういう理由。」 本当はピカピカの部屋じゃ落ち着かないからなんだけどね。小物くさっ。 「わかったならさっさと帰ってくれ、あと始末書な。覚悟しt」 「ここだ!」 ばばっ、と隼鷹は足元の畳をひとつ返した。 「ビンゴ!」 「マジかよ」 そこは僕の酒の隠し場所だった。 「はっはっは~旨い酒だあ、初めてのんだぜこんなの~いつものんでる安物とはわけがちがうぜ。あ、提督も飲んで。」 「…」 僕、威厳ないのかなぁ…。泣けてくるわ。 「なにふてくされてんのさあ。しかしいけずだねえ、こんな旨い酒を一人占めするなんてな~二人で飲んだほうが二倍旨いって。」 「減る量は十倍だがな。」 「かもな。」 ふふん、と隼鷹は鼻をならし酒をあおる。 いいのか軽空母一人にこんな横暴を許して。いやよくない。 隼鷹は完全に僕を舐めてやがる。 鎮守府ひとつ任せられる提督の威厳を取り戻してやる。 同じ空母の風上にもおけないこいつにじいいっくりお灸をすえてやる。 いくぞ。 僕は一升瓶の酒を手に取り一気にあおり… 「っぐ…っぐ…っぐ………」 飲みほした。 「おお!やるねえ!ラッパ飲みとは!すごいすごい!」 「隼鷹!」 僕は立ち上がり、瓶を投げ捨て、咆哮した。 隼鷹はすわった目でこっちを見ていた。 「いまからお前に懲罰をあたえてやるからなあ!遅刻に始まり、さらには僕のプライド…んぐっ」 「んっ」 一瞬だった。 隼鷹はいっきに接近して キスをしてきたのだ。 不意を突かれた僕の口内に彼女の舌が滑り込む。酒臭いと感じたが不快ではなかった。 「ちょ…じゅんよ…ちゅううう…」 「んちゅ、ぢゅるるる、にゅるる、にゅっちゅ、」 酒により潤滑になった舌が官能的な音を生み出す。 口からあふれ出した涎が僕の顎を伝い、足元に小さな水たまりを作る。 これでもか、というぐらいねっとりとした接吻は僕の理性を溶かしていく。 ようやく、ようやく、ようやく、 隼鷹の唇は僕から離れて行った。 足がふるふる震える。 「ああ…」 情けない声が漏れる。 「ふっふーん。提督、さっきの威勢はどうしたのさ~。…ちょっちからかいすぎたかな…。」 隼鷹は僕をそのまま押し倒した。 隼鷹顔が近づく。キスのときは意識してなかったからわからなかったが顔が真っ赤だった。 ただ単に泥酔してるからか、それとも。 「提督さ、アタシのこと、どう思ってるの嫌い?」 僕は何か言おうとしたがあいにく頭も舌も回らない。 「アタシはさ、提督のことキライじゃないよ…?最初はさ、ナヨナヨしててあんましだったけど 結構命令とか的確だし、出撃のときもなるべくアタシたちを危険にさらさない采配してるし、気づいたら横目で追ってるアタシがいて… こんなのアタシのキャラじゃない!って思ったんだけどさ。なんでかな。」 隼鷹はつづける。 「何度も自分の思いをぶつけようとしたよ?でもさ、なかなか前に踏み出せなくって、いつもみたいにからかっちゃって…。 今日チャンスだと思ったんだよね。大きな作戦があるって聞いたからさ、たぶん二人っきりになれるかなって。 私がいなくっても飛鷹がいくならそっちも多分大丈夫だしさ。寝坊なんて嘘。むしろ寝れなかったぐらい。」 つづける。 「提督、だいすき。」 隼鷹のこんな顔初めて見た。 いつもの飄々とした面影などどこにものこってない。 顔を上気させて、眉を八の字にして、目をうるわせて、声はとてもたよりない。 僕は股間が熱くなるのを感じた。 僕の主砲はギンギンに張りつめていた。 隼鷹もそれに気づいたようだ。 隼鷹は子供の頭をなでるようにズボン越しに僕のそれをなでた。 まずい。非常に。 「提督、ここ苦しそう…。アタシがやってあげるよ…」 隼鷹は僕を押し倒している状態から後ろへずれて僕の股間に顔を近づけ、ファスナーを開けた。 肉欲の権化がびいいいいんと飛び出す。 「わ…おっき…こんなに」 「初めてなのか…」 「悪い…?」 「あの無駄に慣れてたキスは?」 「飛鷹とやってたから」 なにやっとんねんこいつら。 隼鷹は一瞬戸惑っていたが意を決したようにソレを口にふくんで、、しごきはじめた。 「ん…ちゅ…んんん…」 さっきのキスのような積極性はどこへやら、未知との遭遇にすっかりダメになっていた。 「無理するなよ」 「無理なんか…ちゅうううう…」 しかし、センスがいい。もう慣れてきたようだ。 「ーーーーーぢゅう、ぢゅ、ちゅ、じゅるうう、んっ…っうんっ…ちゅううう…はあああ…ひもちいい…?」 「ああ、いいかんじだ……あーイキそう…。」 「んちゅ、ちゅ、い、イふってなに…ん、ンんんんんーっ!」 ナニから口を離さなかった隼鷹に精をぶちまけた。 「ええええ…にがいいいい~…」 「まってろ、ティッシュティッシュ…」 「はやくぅ…うううううううう!!!」 隼鷹、本日バケツ六個目の消費であった。 「もう、今日はキスできないね…」 「そうだな。」 「ねえ、その、返事、きかせてよ」 「うれしいよ。けどな、出撃をバックれるはよくないかな。」 「やっぱ…そうだよね」 「僕はお前の態度は気に食わないが、実力はかなりのものを持ってるとおもう。今回の作戦だってお前と飛鷹を中核として戦う予定だったんだよ。 代わりは龍驤がうけもったけど、まだ彼女は発展途上だし正直不安なんだ。僕は出撃を取りやめたかったが軍の命令には従わなければいけないからね。」 「ごめん。」 「沖ノ島は敵艦にすごい戦艦がいるらしいんだが。龍驤、大丈夫かな。」 「ごめんなさい。」 「一人身勝手な行動をとるとと全員が危険な目にあうんだ。クサイ台詞になっちゃうけど僕たちは一つにならないと敵に勝てないんだよ。」 「ごめんってば…」 「だからやっぱり軍規にそむいた隼鷹さんには僕自ら罰を与えないといけないかな…。」 「え…」 今度は僕は隼鷹を押し倒した。 服のひもをほどき胸を露出させる。 隼鷹は無抵抗だった。 「んんっ、はずかしいよお…」 大きさと美しさを兼ね備えた素晴らしいおっぱいだった。 やはり空母の母性あふれるおっぱいは最高だぜ!龍驤…?しらない娘ですね…。 いてもたってもいられず僕はひとつ、口にふくみ、なめる。 「やあぁ…ぁいや…ひゃ…」 甘い吐息が漏れる。 もう片方のおっぱいも手でいじくる。 「ん…おっぱい、いい、きもち、いい、よ」 甘噛む。強くつまむ。 「きゃゃあ!…んっふうんんああああああああああ」 これぐらいでいいだろう、次は…。 隼鷹のからだのすべてが露わになった。 下半身もまた、きれいだった。 足は長く肉つきがいい。それに秘部には毛が生えてなかった。処理しているのか、天然か。 「ていとくぅ……。」 秘部からとろりと液がこぼれた。 僕はそれを舐めとる。 むわりと女肉のかおり。 「んんいいいいいいいい!!!!」 少し舌でふれただけで物凄い感じ様だ。 このままクンニもいいと思ったが、ある名案を思いついた。 空母だからできること…。 「隼鷹、お前今飛行機だせる?」 「はあ、はあ…え?なんで」 「いいからさあ」 隼鷹は脱いだ服と一緒に置いておいた巻物を開き、一機、手のひらサイズの天山を生み出した。 「だしたけどどうするの?」 「こうするんだ。」 僕は天山を隼鷹の秘部に押し当て、発動機を入れた。 天山の火星エンジンがうなりをあげる! ぐうううううううううううううん!! 「ひゃあああああああああああああああん゛ん゛ん゛ん”ん”ん”ん”んんんんんんんんんんんん!!!」 プロペラが体に当たらないように気をつけて… 「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”びいいいいいいいいい!!!!!!」 腹の燃料タンクをくいこませるように… 「ひぐううっ、、いくぅいくいっちゃあああああああああああああああああ、、はああああああああああああああああああああ!!」 隼鷹は体を反りかえらせ盛大に果てた。 大量の愛液が僕にかかった。 天山は水没してこわれた。 「はあ…はあ…はああああ…じゅる…」 隼鷹はもはや虫の息だった。 目は虚ろ。涎は垂れ流し。 体はびくびくと痙攣している。 だが僕の一転攻勢はまだ終わらない。 先ほどの乱れっぷりをみせられ僕の主砲はもう戦闘モードだ。 「夜戦では空母役立たずだから…乗り切る訓練がいると思うんだよ。」 「あ…うん…きて、へぇき…だからぁ」 まわらない呂律は僕をますますその気にさせた。 「いくぞ。」 ず…ずずず。。。ずん。 大量の愛液が潤滑油となりすんなりと隼鷹は奥まで僕を受け入れた。 「んっはああ…あああああん」 結合部からあふれる液の色に赤が溶け込む。 「初めてなんだろ…大丈夫か?」 「へぇきだから…動いてもいいよ」 なんて健気! 「じゃあ、動かすぞ」 いろんな液体が混ざり合ったずるずるしている。 奥まで差し込まれたソレを途中まで抜いて、 「んんん…」 差し込む。 「ひぃいん!!」 はやく。 「んっ!!んんっ!!はああっ!んひっ!!ひゃあっ!!んんっ!!」 もっと。 「はひっ!いいっ!いいよっ!きもちいぃ…っ!もっと!もっとおぉ…」 はげしく。 「はげっ!提督っ!はげしっ!!提督っ!ていとくぅ!んんんん!!!!」(禿げ提督?) やばい。止まらない。もう隼鷹、を犯すことしか考えられない。 ただ、機械的に、う、ち、つ、け、る。 「んんっ!!ははああ!!いいやあ!…動っひいいん!」 猛烈な射精感がせまるるる!! 「あぁあっぁあ!好きぃっ、てーとくすきぃ、ひゃあああ!」 「っく、射精すぞ!」 「きてっ、きてっ、、あたしも、もうっ、無理!んん!いくううううううううううううううう!!!」 「只今戻りましたていと…。」 「あ」 飛鷹…!!!!! くそ!射精コントロール! せず。 「はああああああああああああああああああああああああああああああんん」 「えーと、戻るの早すぎじゃない?」 「陸奥さんの第三砲塔が謎の爆発をおこしまして大破、さらに、その爆発に扶桑姉妹が巻き込まれてお互い中破。やむなく撤退しました…。」 あら、あらあらぁ 不幸と踊ちゃったか…。 「それよりですよ?なーにやっちゃってんですかね。裸で。」 「あ…そのーこれはねー…」 「隼鷹のこんな顔や声初めて…。こんの破廉恥提督ー!」ポーン ああ!飛鷹の頭からエレベーターが! おわり
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前の話 1 柔らかい初春の陽が、執務室の床を照らしていた。人の一人もいないその部屋には、外からの鶺鴒の鳴き声が小さく響き、春風凪ぐと窓が大仰にガタガタと震えた。 午後の麗らかな陽気に、しかし耳を澄ませてみれば、それ以外にも物音がある。 執務室北西の奥には、木戸に隔てられた部屋がある。広さは八畳。箪笥と蒲団以外何も置かれていないそこは、この鎮守府の長たる提督の臥房である。洋間である執務室から一段の段差越しに廊下が伸び、先にはい草の畳が侘しく敷き詰められていた。 景観は、さながらアパートの一室といったところであったが、この部屋の主が最低限の物しか置かないために生活感は絶無と言っていい。 隅に遠慮がちに敷かれた蒲団は、組み合わせとしては申し分ないはずなのに、どこか烈々と違和感を放っているのだった。 今、まさしくその蒲団に顔を埋め、毛布を手繰る艦娘がいた。蕩けた眼は薄く開き、頬は赤く、息は獣のように荒い。もぞもぞとマーキングするかのように、体全体をなすり付けながら、時々思い出したかのように入り口の方へ視線を向ける。 浜風は提督の不在に、背信による情欲を昂ぶらせていた。半日の休暇は、だがもうすぐ終わるはずであった。 何時彼が帰還して部屋を覗くかも分からない状態で、だがこの羞恥の危機感が、むしろ興奮を促していた。 決して触れる事のできない腹底を熱い疼きがのた打ち回り、鋭敏になった皮膚感覚が触れるもの全てに悦楽を見出す。芳香肺に満ち、 彼に抱きすくめられているかのような錯覚が、妄想をより補強した。嫌悪して止まなかった“ああいった行為”を繰り返してきた彼の、 しかし手練れた指使いや舌や、或いは言葉を想像しては、内股が強張り震えるのだった。 彼女の根は、未だこういった衝動による行為を容認してはいなかった。逃げ道として、今の自分は本来の自分ではないという言い訳 を脳内に用意した上での自慰であった。だから、空想しているのは彼によって懲罰を受ける自分であり、そこに彼女は一種の救いを幻 想しているのである。 普段朗らかに何をされても許してしまうような提督の、蔑みや軽蔑の視線をイメージしては、心内でひたすらに謝り続ける。いかに も無垢な風を装っておいて実はこんなに変態だったんだと、なじられ謗られ、だがそうした想像に顕れる胸の切なさや痛みが甘い悦び だった。ごめんなさい、ごめんなさいと繰り返し胸の内に唱えた文言は、何時からか知らずの間に実際に口から呟き漏れていた。 捗々しく進んだ妄想の果ては、口淫である。約一月前、今考えてみれば気が触れていたとしか思えない行動だったあのフェラチオの、 苦しさや痛みや、彼の熱さ、鼓動。口や喉で感じえた全てのものを思い起こすのだった。 ただ妄想の中では、あの時のように自分からするのではなかった。彼から無理やりに髪を掴まれ、暴力的な肉槍が唇を割り、陵辱さ れるように喉を犯されるのだ。彼女は屈辱と苦痛の罰を欲していた。むしろ痛めつけられる事が至上の欣悦なのである。 未だ、手は毛布を掴んだままであった。彼女は体を触る事さえしなければまだボーダーを越えてはいないと錯謬に認識し、その考え に支配されていた。真面目で性を嫌悪する外面の自身が、情欲に翻弄されたこの様を決して許しはしないのである。 一回でも触れることができたならそれだけで容易に絶頂し、安堵と罪悪感の中で満足を感じるはずであった。この蒲団の香りを嗅ぎ 続けているのも途端、馬鹿馬鹿しくなって、自己嫌悪の念を胸に抱きながら部屋を出る事だってできるはずだ。 それが分かっていても、毛布を握っている掌を矜持がぐっと押さえつけていた。アクリル素材の毛羽立った繊維が、鉤爪状に皮膚を 突き刺しているようだった。狂おしい程にもどかしく、強情がきりきりと胸を締め付ける。 浜風は今一度、扉の方を確認した。視線を向けたとて彼の居場所を知れる訳も無く、耳を澄ませたとて隣の執務室に入ってきたのか さえも分からない。無意味な行動であるしそういった自覚もあったのだが、自身のしようとしていることが余りに倒錯しているから、 確認せずにはいられなかったのだ。 体の熱に促されるまま、彼女は首もとのスカーフに手を掛けた。しゅるという布擦れの音が予想以上に大きく響き、ぎょっとして再 三ドアを見た。理性が引きとめようとするままに、しばらくは固まっていた彼女であったが、とうとう劣情が覚悟を定めると意を決し てボタンにまで指を伸ばす。 露出した胸元を冷えた空気が撫で上げた。完全に開かれ、腕の通されただけになったセーラー服が、背中の中ほどにまでするりと落ち る。白く柔らかな背筋に隆起した肩甲骨の影が映り、荒い息遣いの上下する胸が、下着の中の乳房を僅かに揺らした。 フロントホックにまで手を掛ける。頂が露出するのに未だ抵抗があったから、すぐに毛布を手繰り寄せた。そのまま腹ばいに寝そべ ると押し潰された双丘が厭に苦しく、肘を立てて体を支えた。 ほぼ半裸に近い状態で、凸の字になった蒲団と毛布を抱え込むようにして伏せている。自身の無様が意識され、まさしく性欲とでも 言うべき体の中からの衝動が頽れもした。だのに臓腑の熱さやぬめりや、そういったグロテスクな“何か”の疼きは一向留まる所を知 らず、その厭悪の無様に倣うより他はなかったのだった。 彼女はおずおずと、まるで芋虫が下界を這うように体を揺すり始めた。自重を取り残したかの如く、前後するたび体に遅れて擦られ る、二つの柔らかな珠。ピリピリと火傷傷のような刺激が、桃色の頂を焦れったく凪いだ。絞られた肺が空気を吐き出し、独りでに震え る喉が淫靡の音階を刻んだ。蒲団が余りにも彼を感じさせるから、まるで本人を穢しているかのような錯覚を覚え、胸を浸食する罪悪 感は途端にその速度を増したのだった。 強姦だ。浜風の脳裏にその一言が浮かび出た。これは彼を冒涜し、貶め、代わりに自身を満足たらしめる、即ち強姦に他ならない。 陵辱、強淫。文言が頭をよぎる度に異常の興奮が腹底から沸いてきた。奔放な彼を犯しつくし、もう二度と自分以外を見れないように してやると、ほの暗い情欲が支配の悦を求め始めていた。罪の意識の反面に、獣の欲望が滾っているのだ。窮屈に潰れた谷間を蒸らす 汗が、それを表しているように思われた。 彼女の目尻から雫が零れ落ちた。どれだけ高潔にいようとしても、結局は肉の体には逆らえない。その歴然たる事実、今こうして蒲 団を後ろめたい用途に使っているという事に惨めさを感じていた。漏れ出す声は嗚咽か嬌声か、最早入り混じり区別はなくなっている。 崩壊した理性、顕れた獣性に従うまま、彼女は黒ストッキングの淵へ指を差し込んだ。腰を折り体をくの字に曲げ、ずるずると色白 が外気に触れていった。蜜を溢れさせた秘所は切なげにひくつき、降りてゆく下着との間に透明の橋を渡した。この穢れを、彼に塗り たくる。その欲求は絶対に消化しなければならないものであった。さもなくば狂って切な過ぎて死んでしまうと、彼女は本気でそう信 仰しているのである。 一度高らかに上がった腰が、徐々に蒲団に近づいてゆく。もう頭からは、その後の処理であるとか倫理だとか性欲を押さえ込む思考 は悉く弾かれていた。今、まさしく、刺激への貪欲さを湛えた朱の口が彼とキスしようとする瞬間、 だが、突如として戸が開いた。 「なに、しているんだ?」 平坦の声であった。浜風は硬直し、指の一筋さえまったく動かせなくなっていた。冷水を頭から被されたように、心臓が縮こまり思 考が冷凍され、何もどうする事もできないのである。脳内には虚無が進展する。背中を露わに尻を突き出し、さっきまで穢していた提 督に実際にその姿を見られているのにも関わらず、恥も何もかもが消え落ちていた。当然声など出るわけも無い。不気味に揺れ動かな い心内を、ただ客観に眺めているような感覚で、ただ硬直し続けていた。 「あ、僕は何も見ていないから。ごゆっくり」 そうして、察しの良い彼はクールに踵を返す。悲鳴と、蒲団を打ち据えるぼふ、ぼふという音が漏れ出し始めたのは、それから一分は経った後であった。 2 執務室とこの部屋とを遮る一枚の木戸は、今の浜風にとってまさしく地獄の門と同等のものであった。 幸いにして寝具に汚れはなかった。隅から隅まで執拗に視線を廻らし確認した後、乱れを整え、事をする前の状態にまで完全に復元 した。部屋の隅に消臭スプレーを見つけるや、毛布に細かな水滴の見えるまで吹き付けて、窓を開けると部屋の空気を団扇で遮二無二扇 ぎ続けた。どこにも残滓を残していない事を確認すると急ぎ扉にまで近づいたのだが、ドアノブを握ると恐怖や羞恥が腕の力を悉く抜 きさって、躊躇いの体勢のまま既に五分は過ぎ去っている。言い訳はできず、だからこそどんな顔をして彼と口を聞けばいいのかも分 からなかったのだ。 思えば一ト月前、この部屋で夜を明かした時も似たような心持であった。舌を噛み切りたくなるほどの情けなさや慙愧。蒲団のある 方とは反対の壁に背を付けて、肩膝を抱えて寝ていた彼を視界に入れ、彼女は嗚咽を我慢する事ができなかった。あれだけの事をした のに唯一の寝床を貸し与え、離れた所からただ見守っていた。そう分かった途端に、自身の惨めさを到底許す事ができなくなったのだ った。 もう死ぬしかないと本気で考えた。これ以上彼からの優しさや気遣いを受け取ったなら、完全に矜持が手折れると思った。その行き詰 まった寂寥が涙を溢れさせて、苦しみの喘ぎが過呼吸気味の息に乗った。舌を噛み切ろうと決意し、だが今までこうして生きてしまっ ているのは、それもまた提督の庇護の為である。 あの時、泣きじゃくる声に目を覚ました提督は、まるで病人を献身的に介抱するが如く彼女の頭を撫でたのだった。絶対的な安心と 赦しとを与えられた彼女は、同時に甘えという惰弱を受け入れてしまい、結果的には死ぬに死ねなくなってしまったのだった。より彼 に近づきたいと、より優しくされたいという欲求が胸に甘美の灯を燈した。頭を撫でた彼の筋張った指が名残惜しく思え、そうして気 が付けば獣性と矜持のせめぎ合いに心をやつす日々である。 まだ一ト月前に比べればましだと、浜風は短く溜め息を吐くと意を決してドアノブを回したのだった。午後の日に暖められた空気が、 開いた隙間から溢れた。 提督は所在なさげに執務机に座っていた。彼女の姿を認めるや、 「お土産あるんだけど、食べない?」 手元の紙袋を掲げながらそう言った。 「お土産、ですか?」 「すかのわって知らない? 焼きドーナツなんだけど」 「いえ……」 彼は袋を開けると、中から半透明の長箱を取り出した。こげ茶色の、しっとりとした輪っかが五個ほど連なり、その一つ一つがきち んと小袋に入れられているようだ。 おおよそ、彼がこのまま無かった事にしようとしている事を浜風とて察知していた。それに従うのが得策だしお互いに楽だと分かっ ていながら、だが礼儀という枷を人より重く感じる彼女である。箱を縛る紐を解こうとしている提督を見、果たして恥を忍ぶ事はできなかった。 「あの、提督」 「ん?」 「すみませんでした」 枕詞が、不在の隙にあなたの蒲団を使って自慰をしてしまって、であった。彼からは何も責められていないのに勝手に自身で恥辱を 向い入れ、それがまた惨めに思われた。視界に映る床のカーペットが俄かに霞み、歪んだ。 下げた頭にふわりと手が置かれた。 「はい、これ」 同時に、取り出された焼きドーナツが目の前に差し出される。 あくまで親切を押し通すという態度に、彼女はかっと頬が熱くなるのを感じた。彼からの優しさを感じるたびに何時も自殺衝動に襲 われて、今回も例に漏れず舌を噛み切りたくてならなかった。いっそからかわれた方が気楽であるのに、残酷にも無かった事にされる から罪を清算する機会も失われたのである。 顔を上げ、差し出されたドーナツを受け取る。陰鬱な心緒が負に跳ねたのは、まさにその瞬間であった。 微かではあった。しかし間違えようも無く、彼の服には乳香が、忌まわしい娼婦の香がこびり付いていたのだった。罪悪感に打ちひし がれた心を一瞬にして暗いものが侵蝕する。爆発的な勢いで文句や罵倒が頭を過ぎ去り、怒りが無限に増長しようと胸の底から溢れ出 す。感情のまま口が開こうとした瞬間、だがそれらの激情は萎むのも一瞬であった。 「もう来ないよって挨拶しに行っただけ。何もしていない」 全てを察したらしい提督は、呆れたような笑みを浮かべてそう言ったのだった。怒りに取って代わったのは、気恥ずかしさと例の舌 を噛み切りたい衝動で、しかも悪気の無い彼は更に追い討ちをかけた。 「君は色々とむつかしく考えすぎ」 浜風は羞恥にとうとう顔を上げる事もできず、ただドーナツを口にするだけになった。肩を震わせているらしい提督の様子が何とな く空気に伝わってくると、やっぱりもう死ぬしかないと慙愧の念一色に囚われた。そんな状態では味に意識が向かうわけも無く、彼の おいしいかという問いかけにもただ本心の篭らない頷きを返すだけである。彼女はしばらく、口を開く事さえできなくなった。 3 クレーンの航空誘導灯が、闇夜に埋まった廊下を紅く俄かに彩った。丑三つ時、死んだように眠る鎮守府に息を潜めて歩く浜風は、 薄い青のパジャマを纏い執務室へと向かっていた。 上気している頬が、彼女の目的を黙して語る。昼に生殺しを喰らった彼女は、未だその欲求の発散をできていなかったのだ。触れな いという枷を自身で嵌めてしまった為に、よほど刺激が足りなさ過ぎて満足を得ることなど到底不可能であった。自身の蒲団を使うに は虚しさの寂寞に耐えられず、思い起こされるのは彼の臥房の匂いであった。 思い起こせば、そもそもこの一ヶ月の間に満足を覚えた事など一度も無かった。身体がオルガスムを迎えた事なら幾度かもありはし たが、それが精神的満足に直結するかといえば当然否である。寧ろ、罪悪感と寂寥感とをない交ぜにした感情は、より一層の飢えを現 出させたのだった。 浜風はのぼせた様な心地のまま、とうとう執務室の前にまで辿り着いた。物音絶無の廊下に木戸の軋む音がやたらに響き、それは唯 でさえ高まっていた彼女の心拍をより一層激しくさせた。 灯りの消えた夜の執務室は、しかし大きな窓に月光が吸い込まれ割合明るくなっていた。彼の寝室にまで行く算段であった彼女はだが 戸を閉めてしまうと、足の動きを止めてしまった。この部屋が思っていた以上に見晴らしの良い為に、途端臆病風に吹かれたのだ。最 早このような時刻にこの場にいる時点で大して変態性に差もないのだが、人に見られた時のリスクというものに怯えが足元から湧き出 した。 しかし、帰るには腹底の熱が熱すぎた。逡巡の後、彼女の脳裏に閃いた妥協案は、いかにも生娘の辿り着いた純朴の倒錯である。 彼女は身を屈ませながら部屋の隅まで移動すると、ラックに掛かった提督の帽子を手に取ったのだった。愛おしそうに両手で胸に抱 え、それからおずおずと鼻へ近づける。薫香の吸気肺に満ち、ぼやける思考が更に酔った。匂いをひたすらに嗅ぎ続けながら、一方足は 導かれるようにして執務机に向かう。ちょうど腰丈の角へ到達すると、浜風は跨るようにして陰唇をそこへと押し当てた。 下着と厚いパジャマのアクリル生地越しに、堅く冷ややかなそれを感じた。無意識の内に呼吸が荒くなり、彼の帽子がマスクみたいに 覆っているから音がやたら大きくなった。さながら犬の息づかいと、時折鳥の鳴いたような嬌声が混じり、それは静寂の部屋に木霊す る。腰を振る自身の姿を客観視して自己嫌悪が胸を刺すように痛ませても、興奮は一向冷め遣らない。自分の意思とは関係なく、求め る快楽のままに身体が動く。その内に一番外のパジャマにさえ、しっとりとしたものが染み込みだしたらしかった。 ギシギシと机の軋む音が焦燥を煽った。自身の部屋でしていたよりも数段烈しい刺激に、だが彼女は背反の心持である。即ち、これを 延々続けたいという悦への欲望と、誰かに気が付かれる前に終わらせたいという理性であった。どちらがより強いかは、自明である。 五分は経った後であろうか。もう少しで絶頂する段になって、彼女はつと動きを止めた。大きくなった気が、このまま終わらせた後に 残る思い置きを想起させたのだ。恐らくは熟睡しているであろう提督をたった扉一枚に隔てておいて、まったく関せずに終わるのは些 か勿体無いように思われた。 性の興奮が、彼女の箍を外していた。それは外面の彼女が見たならば目を覆うであろう乱れの自身であった。引き止める理性は余り に弱く、ただただ興奮だけに体を委ねる。浜風はつい昼に訪れた背徳の部屋、その扉に手を掛けたのだった。 寝室の廊下に足を踏み入れた途端、心臓の鼓動がより一段と大きくなったようだった。マラソンの後のような息苦しさが、胸をひた すらに締め付けた。忍び足に歩を進めてゆくと、とうとう視界には彼の寝姿が、蓑虫のような蒲団の膨らみが映り込んだ。 興奮に荒らげられた息を飲み込むように抑えながら、彼女は蒲団のすぐ横にぺたんと腰を下ろした。提督は、まるで彼女のこれから の痴態を見るかのように横向きに眠っていた。当然、起きそうも無いことは分かっていたが、もし目を開けてしまったなら言い逃れはでき ない訳で、そういった後の無さに羞恥がより一層煽られた。 彼女はおずおずと顔を毛布へと近づけた。半ばうずくまる様な格好のまま彼の直接の匂いを嗅ぎ、果たして今までの禁止を尊守する 理性は微塵も残ってはいなかった。体の一番熱い所へ、とうとう独りでに手が動いた。まともな思考回路は焼き切れて、今彼女を動か すのは情欲の獣性だけである。 か細い指がそこへと到達する瞬間、期待の刺激が今まさに背筋を突き抜けようとして、だが微かな気配の揺らぎがぴたりと動きを静 止させた。 受け入れがたい現実であった。彼女は伏せた顔を上げようとしたが、恐怖が万力のように重く圧し掛かっていた。それでも、恐る恐 るに前を見れば、憂懼の予想は的中していたのだった。 怪訝に眇められた彼の眼が、じっとこちらを見据えていた。 恐怖の色が、情欲をさっと塗りつぶしたようだった。一回目の時と違い今度は焦燥の元、否定の言葉が口へと昇った。 「ち、違うんです。これ、は……」 掠れた声音の漏れると同時、意識せぬままに涙が溢れ出してきた。それは情けなさと羞恥の自己嫌悪だった。例の、死にたくなる願 望が胸の中を駆け巡り、咄嗟に窓の方へ視線を向けてしまうほどそれは強烈なものであった。 言葉は続かなかった。事実として、己の欲に促されるまま行為をしようとしていただけである。濡れた下着の冷たさを感じると自身 が醜い獣に思えて、ただただ胸の痛みが辛かった。つい半日前に同じ失敗をしておきながら反省もせずに情欲に呑まれた事が、恥ずか しくてならない。 提督がむくりと起き上がった。それを見、浜風は反射的に立ち上がる。居た堪れなくなった彼女は言葉も無く逃げ出そうと踵を返し、 しかしぐいと引っ張られた手によって盛大にバランスを崩したのだった。 最初、天地が大仰に揺れたために、彼女は自身の体勢を理解する事ができなかった。背中に感じる体温が厭に熱く流れ込んできて、 それが意識されてからようやく、どうやら提督の足元に倒れこんだらしいことを察知した。しかも彼の息づかいがすぐ耳元に聞こえ、筋 張った手がウエストの辺りへ置かれていたから、半ば抱きすくめられているような状態らしく、暗い部屋の中でも分かるほどに頬が紅 へと染まっていった。 「あの……提督?」 五月蝿くなった鼓動が気恥ずかしく、彼女はそれが悟られないように体を離そうとした。だが、ただ置かれているだけだと思われてい た彼の右腕が実はそれなりにかっちりと力の篭っていたために、肩甲骨辺りを触れないようにするのに精一杯で、背筋の中ほどには容 赦なく体の温かみが広がった。 手を掴んでいた左手が蛇のようにするりと動いた。首元、一番上まできっちりと留められたボタンに人差し指が掛かると、一秒もか からずに外される。魔法じみた手付きに感心や納得を覚えた浜風は、だが遅れてようやく事態を飲み込むと反射的にその腕を取ったの だった。 「提督、あの……駄目です! こんなこと……」 制止の言葉に、だが彼が従うわけも無く、腰を固定していた右腕がつとわき腹を撫で上げた。跳ねるように前屈みになった彼女はそ の拍子に手を離してしまい、そして二つ目のボタンも他愛なく外されてしまったのだった。 浜風は露出した鎖骨や胸元を隠そうと、屈んだまま開いた服の端同士を掴んだ。睨みつけるために振り返ろうとした瞬間、だが提督 が密着するように体を近づけたから、首を動かせなくなった。そうして握りこんだ掌には彼の右手が重なって、指の股へそれぞれの指 先が掘るようにして進入した。こそばゆさに耐え切れず握力が溶け出すように消え去って、だが手への愛撫は止まらない。腕の力が無く なったのを確認するかの如く、提督は彼女の指や掌の窪みや手首にまで執拗に指を這わせ、とうとう死んだ蝉が木から落ちるように手が 襟元から剥離すると、すかさず空いていた左手が胸元の露出を高めていった。 上から四段のボタンが解かれた。最早下着以外に二つの丘を隠すものは無く、冷えた部屋の空気に触れて彼女は羞しさの極地にある。 「……もう、許してください」 捨て犬の鳴いたような懇願が、だが無慈悲にも無視をされ、フロントホックの金具をなぞった人差し指が片側の生地を押さえつけた。 器用にも中指と親指で金具そのものを摘み上げると、提督は上へと力が掛かるように手首を回した。縛る圧の消え去ったのを、浜風は 絶望的な心境で感じていた。 解くものを全て解きおえた左手は、腰骨の凸に乗せられた。右腕の人差し指が鎖骨の繋がる肩口の出っ張りをなぞり、そこから段々 と下へと降りる。徐々に徐々に柔らかみの増してゆく身体に、指が沈み込んでいく。とうとう圧される谷間に指の筋全部が消え去って、 手首の辺りが桜色の頂を擦ると、彼女は競り上がる声を我慢する事ができなかった。死にたくなるほどの羞恥に、だがそれも彼からの 愛撫の為と思うと熱は胸底に甘く溶け出す。表に立ち始めた情欲が、抵抗をぱたりとやめさせた。 表面を撫でるだけだった彼の手は、次第に激しさを増していった。指の間に尖った先端が摘み上げられ、掌は零れ落ちんばかりの膨 らみを押した。乳房は彼の動きに従順に蠢き、むず痒い熱が腹に蓄積されるようだった。 左手が下の隙間に侵入して、危機感のようなものは煽られど、それ以上の期待が抵抗をさせなかった。彼の指は遠慮も無くぬめる割 れ目の上端に辿り着き、焦れた直接の刺激は彼女の背中を大仰に跳ねさせた。 余りの背徳に、彼女の頭は沸騰しそうになった。自身の欲望の本懐に提督の手が掛かり、改めて状況の異常さに気が付いたような心地 だった。自身は艦娘であり、彼は提督であり、そして当然今のこれは許されぜる事でありと、一つ一つ確認する度息がきりきりと詰まって ゆく。 窒息しそうなほどに肺が絞られ、しかし彼は容赦も無く淫裂を的確になぞっていた。気を遣っているのか、決して淫靡の穴へは一寸 たりとも進入をせず、ただ塗れそぼる表面を愛撫するだけであった。 快楽の合理に寸分違わぬ、最早機械的とさえ形容できる動きである。ミキサーにかけられた様な思考の中、浜風は限界が近いのを他 人事のように察知した。 体中のあらゆる筋が突っ張って、それはもう痛いとさえ言えるものだった。息が止まり何秒も硬直があった後、がくがくと体の部分 部分が手折れだす。とてつもない疲労感が脱力の極みへと身体を誘い、浜風は提督の胸へと寄りかかった。 犬のように荒い呼吸が、僅かにではあるが時の経つにつれ落ち着いてゆく。提督は抜け出すように体を回し、浜風を自身の蒲団へと 寝そべらせた。 ぼぅと天井を見上げ、胸や腹のこそばゆさを感じる。視線を動かす事さえ億劫になった彼女は、だがどうやら彼が服の乱れを整えて いるらしい事を知った。 「……最後まで、しないんですか?」 うわ言のようにそう聞くと、 「しちゃったらそれこそ問題だよ。……満足した? おやすみ」 提督は彼女の額に手をかざし、前髪を梳くように撫でた。寝ては駄目だと心のどこかが叫んだが、倦怠が瞼を閉ざしてゆく。充足と 飢えとを抱えたままに、意識がふわりと溶け消えた。 寝息を立て始めたのを確認してから、提督はおもむろに立ち上がった。二日酔いみたいに、壁に手をつけながらふらふらと廊下を進 み、執務室への戸をくぐる。開かれた戸の隙間が今度は完全に閉ざされたのを見て、それから彼は盛大に宙に向けて溜め息をついた。 彼女の恋慕を意識して、恐怖と呆れに心が荒ぶ。執務机の椅子に腰掛けると、どっと冷や汗が湧き出して、雫が額に浮き出る感触が 気持ち悪くてならなかった。 彼は倫理であるとか、そういった高尚な理由のために手を出さなかったのではなかった。純情を捧げられるという事への厭悪から、元々 行為を終わらせたくて仕様がなかったのだ。情欲に瞳を揺らがせた彼女の姿は、提督にとっては恐怖の対象でしかなく、しかし保身のための優しさがそれを伝える事をしなかった。 昔から同じ過ちを繰り返し続ける、愚かで矮小な性質である。 その場しのぎの愛撫であった。彼は関係の保持を求めながら、一方で欲求を受け止めはしないのだ。処女は童貞へ純潔を捧げなけれ ばならないと、過去の経験がそう信仰させた。卑下による気遣いではない。保身のための弁解だった。 「なんで僕を好きになった……」 薄明かりの月光に独り言つ。泣き出したいような心緒が、波紋のように微か揺れる。 今回の事で彼女は誤解し、そして何時かの破裂が確定的になった。暫くは平穏になるだろうが、溜まり続ける不審はきっと本質を見 抜かせるはずである。好意から褥に就かせたのではなく、逃避として我慢をしていたのだと。その時、彼の臆病で愚劣な性根が間違え なく彼女に傷を残す。憂鬱がひたすらに延伸し、心をすっぽりと覆ったようだった。 彼は執務机、中段の引き出しに手をかけた。顕れた中身のずっと奥、書類に隠されるように銀と紙の小箱がある。逃避の逃避だと自嘲 しながら、彼はその二つの箱を取り出した。 十重二十重と皺のついた紙箱から一本の巻きタバコを口に咥え、銀箱は上部を展開すると、フロントホイールに指を宛がう。甘い陰 気な煙が立ち上り、彼はつくづく悲しくなった。